全員ドラ1「早大三羽烏」最後のひとり・福井優也の現在地 NPB復帰は「こんなんじゃ無理」それでも「今の野球をやりきる」
【こんなんじゃ...突きつけられた現実】 福井には、試合に出たくても出られなかった1年間があった。早大に入る前に、鳥取のワールドウイングというトレーニング施設でトレーニングを積んだ浪人期間だ。 「準備期間としてすごくいい1年間だったなと思っています」と振り返るが、「ゲーム自体はできなかったので、野球がやりたいという気持ちは強かったですね」と、試合で投げることを渇望した。その間には地元で軟式野球大会に出場したこともあったという。 事情は違うものの、逆境を力に変えようとする姿勢は、その当時にどこか重なる。 しかし一方で、厳しい現実もある。これほどの活躍を見せても、NPBのどの球団からも声がかかることはなかった。 「抑えても、甘いボールはあった。ただ、そこを相手バッターが仕留めてこないから助かっただけであって......。プロ(NPB)だったら、仕留められていただろうなって思ったことは何回もありました。こんなんじゃ無理だなっていうのはわかっています」 高いレベルに身を置いていたからこそ、今の自分がそのレベルにないことはよくわかっていた。 「去年1年間で呼ばれなかったので、あきらめたというか、そこ(NPB復帰)はもういいかなって思っています」 現実を突きつけられた福島での1年目だった。 1年でけじめをつけるはずだった。だが、今シーズンも福井の姿は福島のグラウンドにあった。 「体がちょっと痛かったり、きつかったりしますが、だからといって引退するっていう感じもしないんですよね。ケガもなく、まだできているので、やめる理由がない。悔いのないようにやりたいって思っています。この1年が勝負だと思っていますが」 "やめる理由がない"ことが、現役続行を決めた理由だった。
【コーチ兼任で指導者としての一歩】 だが、肩書きは昨シーズンとは少し違う。昨季は投手に専念していたが、今季は"コーチ兼任投手"となった。 「選手をずっと続けられるわけではないので、指導者としての勉強をしようと思って、今年からコーチを兼任しています」 現役投手を続けながらも、将来を見据えて指導者としての一歩を踏み出した。 もっとも、コーチ兼任投手は、想像していた以上に大変だった。自分の練習ができるのは、ほかの投手のピッチング練習を見たあととなり、なかなか思うような練習ができずにいた。 「そのあとにいざ体を動かそうと思っても体が重いんです。"今日はいいか"って自分自身に負けてしまうこともあった」 新しい肩書きになかなか慣れず、春先から絶不調だった。 4月14日の西武のファームとの試合では1回をもたずにノックアウトされている。6月9日時点で2勝3敗、防御率6.42と不振が続いている。また、5月半ばからは中継ぎに回っている。 「なかなか選手兼任コーチって難しい」 思わず漏れ出たそんなひと言には、実感がこもる。