全員ドラ1「早大三羽烏」最後のひとり・福井優也の現在地 NPB復帰は「こんなんじゃ無理」それでも「今の野球をやりきる」
福井優也(福島レッドホープス・コーチ兼任投手)インタビュー 【エリート街道から戦力外通告】 【写真】楽天チア「東北ゴールデンエンジェルス」2024年新メンバー9人・フォトギャラリー かつて広島や楽天で活躍した福井優也はこの春、福島で2度目のシーズンを迎えた。 「本当は去年1年間のつもりだったんです、野球自体が」 今年で36歳。現役引退が頭をよぎるのも無理もない。 岡山県出身の福井は、愛媛・済美高ではエースとして活躍。創部3年目でセンバツ初出場・初優勝を成し遂げ、甲子園を沸かせた。 1年間の浪人を経て早稲田大に入学すると、同期の斎藤佑樹、大石達也とともに注目を集め、4年時にはエースナンバー「11」をつけ神宮で躍動した。 そして、2010年のドラフト会議で広島東洋カープから1位指名を受けた。チームメイトの大石と斎藤もそれぞれ西武、日本ハムにドラ1指名で入団し、大きな話題となった。 そんな野球のエリート街道を歩んできた福井だったが、2022年10月に楽天を戦力外となる。そして、現役続行を決めた福井が、新天地として選んだのが独立リーグ、BCリーグの福島レッドホープスだった。 家族を仙台に残しての単身赴任。しかも、第2子が誕生するタイミングと重なった。 「奥さんは『気が済むまでやりたいようにやったほうがいいよ』と言ってくれていますが、2人目が生まれたばかりですし、家族にはだいぶ迷惑をかけています」 福井が当初1年と期限を決めて、福島に来たのにはそんな事情もあった。
【貯金を切り崩しながらの挑戦】 NPBのように恵まれた施設はなく、もちろん球団専用の球場もない。練習の拠点としている須賀川市のいわせグリーン球場までは車でも片道約30分かかる。グラウンド整備も選手たちが自ら行なう。 春季キャンプもあるにはあるが、沖縄や宮崎といった南国ではなく、比較的温暖な福島県内、太平洋に面した楢葉町で行なっている。 もちろん待遇もNPBの時とは大きく異なり、貯金を切り崩しながらの生活を送る。 「仙台の家賃もこっち(福島)の家賃もあるので、それが2年、3年と続くとちょっと厳しい。独立リーグのチームとしてはしっかり(給料を)もらっているほうだと思いますが......。そういう意味でもチームに貢献したいと思っています」 そんな覚悟を持って臨んだ福島での1年目。2023年シーズンは、春先こそ「ゲームをつくれたらいいと思って投げていた」と言い、6回程度を投げて2~3失点という試合が続いた。 そして、シーズンが深まるにつれ、調子が上がっていった。8月25日には新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ戦でノーヒットノーランも達成している。 「人生初なんですよ。中学、高校、大学でもやっとことがなかったので。自分が思っているよりも、周りの人が喜んでくれて、反響が大きかったです」 シーズンが終わってみれば、17試合を投げて10勝5敗、防御率2.28で、BCリーグ北地区の最優秀防御率のタイトルを手にした。無双とはいかずとも、NPB経験者として面目躍如と言える成績だった。 「1年間、しっかりローテ(ーション)を守れて10勝できたこと、防御率のタイトルを獲ることができて、このチームに来てよかった。期待されていたと思うので、結果でチームに貢献できたかなと思います」