「なりわい再建」経験伝える 災害スタディーツアー開始 芦北町商工会青年部
芦北町商工会青年部は本年度、2020年7月豪雨の経験を伝える災害スタディーツアーを始めた。被災した商工業者の「なりわい再建」を軸にしたプログラムが特徴。地元の食材を使ったオリジナル弁当を用意し、芦北の魅力発信にも力を入れる。 4年前の豪雨で芦北町では球磨川の氾濫や土砂崩れなどで11人が亡くなり、1人が行方不明となった。町役場がある中心部も浸水。町商工会によると、会員359事業所のうち7割超の257事業所が被災した。約10事業所が廃業したが、残る多くの事業所は再建にこぎつけたという。 45歳以下の会員でつくる青年部は、なりわいを再建した経験は「共有すべき価値がある」と判断。新たな事業として、有料でのツアー実施を決めた。事業委員長の一川大輔さん(41)は「災害が起きれば答えがない中で何度も判断を迫られる。経験談が材料の一つになると思った」と話す。 ツアーの対象は全国の商工業者と大学生に設定。プログラムは熊本県立大や崇城大の学生らの意見を取り入れて構成し、10月には町内の飲食店を対象に、ツアーで提供する弁当の受注権をかけた「お弁当グランプリ」も開いた。
11月2日に初のツアーを開き、県立大の1年生ら約90人を受け入れた。座学に続き、2班に分かれてなりわい再建の経験を伝えた。店舗裏を流れる佐敷川が氾濫し、1階の店舗が水没したフジ写真館では、4代目社長の蓑田憲明さん(37)が被災直後の状況や復旧の歩みを語った。 蓑田さんは、12年分の撮影データが入ったハードディスクを持って近くの旅館に避難。被災した住民の罹災[りさい]証明書の申請に役立ててもらおうと、災害から1週間後にプリンターを新たに導入したことを紹介した。県内外の同業者の支援にも触れ、「片付けを手伝ってくれたり、中古車を持って来てくれたりした。災害時には日頃からのつながりが大切」と強調した。 総合管理学部1年の村吉舞さん(20)は「私も普段から周りとのコミュニケーションを大切にしていきたい」と話した。球磨川沿いの視察などもあった。 商工会青年部は年2回程度、ツアーを開催する予定。参加者に配る冊子も作成する。事業委員長の一川さんは「内容に磨きをかけ、語り手を増やしていきたい。ガンガンやるというより、丁寧に進めたい」と話している。(久保田尚之)