【私の憧れの人】劇作家・演出家・俳優の渡辺えり 18才から追いかけ続けた唐十郎さんの「偉ぶらない礼儀正しさ」に救われた
「唐さんから学んだことは生き続ける」
そんな唐さんは今年5月、急性硬膜下血腫で亡くなった。 「ずっと追いかけ続けてきた唐さんが亡くなり、精神的支柱を失ったような気持ちでした。でも、唐さんから学んだことは私の中で生き続けます。 シュールだけどリアリティーがあって、個性的な出演者一人ひとりの人生が見えてくるような演出。そして、戦争の焼け跡からよみがえる日本の演劇を見てきた唐さんがいつも作品を通して訴えていた、平和の大切さ。これからも唐さんと培ったものを決して忘れず、何才になっても芝居を続けていくつもりです」 尊敬する唐さんに背中を押されて男社会で道を切り拓いてきた渡辺は、来年には古希を迎える。 「最近、ありがたいことに女性から“憧れです”と声をかけていただくことが増えました。女性は年を取るとどうしても孤独になりやすく、気分がふさいでしまうことも多いですよね。でも、日本のおばさんはせっかく若い頃に苦労してきたんだから、もっと堂々と胸を張ってパワフルに生きてほしいんです。 私も古希を迎えますが、年齢を理由に諦めたり、引っ込む必要はないと思っています。例えば電車の中で泣いている赤ちゃんに『うるさい!』なんて言うおじさんがいたら、飛び出していって赤ちゃんをあやしちゃう。自分がこれまでしてきた苦労をほめて、これからの自分に自信を持って、生きていけたらいいですよね」 【プロフィール】 渡辺えり(わたなべ・えり)/舞台芸術学院卒業後、1978年に現在の「劇団3○○(さんじゅうまる)」にあたる「劇団2○○(にじゅうまる)」を立ち上げ、脚本・演出・出演を担当。2025年1月8~19日まで、東京・本多劇場にて『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』を作・演出。 ※女性セブン2024年11月14日号