対中シフトへ増強進む海保 超大型巡視船の建造計画、国内最大の給油基地も
中国公船による尖閣諸島周辺の接続水域の航行日数が29日、3年連続で過去最多を更新した。荒天時以外、ほぼ毎日航行が確認され、海上保安庁は周辺海域に巡視船を派遣するなどしてにらみ合いが常態化。船舶の武装、大型化を強める中国当局に対し、海保史上最大となる超大型巡視船の建造計画を打ち出すなど対中シフトの増強を急ぐ。 中国が尖閣周辺で示威行動を強めているのは、海底資源への野心だけではない。台湾などと並び周辺海域の領有権を主張し、日本や同盟国の米国に対抗して、地域の海上覇権を拡大する要衝の一つとみなしているからだ。 尖閣周辺の領海面積は4740平方キロメートル。海保はこの広大な海域を守るため、石垣島に1千トン型の大型巡視船10隻、沖縄本島にヘリコプター搭載型巡視船2隻を配備。約600人の専従部隊が24時間態勢で領海警備に当たる。 尖閣国有化以降、中国公船の領海侵入が常態化し、平成27年12月以降は砲搭載船の接近事案も急増。近年は中国当局による船舶の増産や武装、大型化を強める動きが目立つ。海保が公開情報に基づき推定したところ、中国海警局に所属する1千トン級の船舶数は昨年末時点で159隻。海保が保有する同クラスの巡視船75隻の倍以上だ。政府関係者によると、退役軍艦の転用などで大型化が進み、最大で76ミリ砲搭載の船舶も確認された。 海保は令和4年に閣議決定された「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、巡視船や無人航空機の大幅増強を計画する。今年8月には海保としては史上最大となる約3万トンの超大型巡視船の新造計画を発表。現在保有する最大級の巡視船より4倍強の規格となる。 9月には七ツ島(鹿児島市)に国内最大の船舶燃料給油施設が完成。日米韓、日米比の共同訓練が行われるなど、東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国への対抗として関係深化が一段と進む。 日本の主権侵害を繰り返し「既成事実化」を内外に誇示する中国公船の尖閣侵入。海保幹部は「法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現するため、一歩も引く気はない」と話す。(白岩賢太)