富山にサッカースタジアム建設へ、基本コンセプトを発表
富山県サッカー協会が設置したサッカースタジアム建設特別委員会は8日、富山市内で会合を開き、スタジアムの基本コンセプトを発表した。3つの方向性として【1】サッカーの迫力を体感できる空間、複合型施設で富山のシンボル的な存在【2】県内外との交流を促進し、富山の関係人口増加、ビジネスチャンス創出【3】富山の付加価値と都市競争力を高めることが掲げられている。同委員で県サッカー協会の横井憲治専務理事は「スタジアムと近接してホテル、飲食店、テナントビル、お風呂屋さん、スポーツジムを隣接して作るのが複合型施設。ほかの県を参考にしながら考えています」と話す。 今後は県民の意見を取り入れるため、各地でワークショップを開く予定。10日には富山大学(学生対象)、12日には富山北部地区(住民対象)、20日は砺波(一般の申し込み可能)で開催する予定。特に富山北部は各種大会の決勝戦で使われる岩瀬スポーツ公園サッカー場があり、“サッカーの聖地”として思い入れは強く、住民側からワークショップ開催の要望があったという。今後も12月まで、合計10回以上のワークショップを開き、意見をとりまとめる予定だ。既に高岡、魚津で行われたワークショップでは「お酒を飲みたいので車を使わずに行きたい」「富山地方鉄道の沿線で作ってほしい」「富山県の真ん中にある富山市がいい」「民間の考え方を取り入れて」「ヨーロッパのようにグラウンドレベルで見たい」と様々な意見が飛び交った。横井専務理事は「今後は意見を共有し、具体的な候補地をいくつか挙げて、建設条件や所有者、住民との関係など、個別にリストアップしていきたい」と話す。 同建設特別委員会では、6月30日に愛媛県今治市にある「民設民営」のアシックス里山スタジアム、7月1日には広島市が主体となって整備したエディオンピースウイング広島を視察した。横井専務理事は「スタジアムを大きく分けると、公設公営、公設民営、民設民営という形があるが、今は議論している。民設民営の今治は郊外型で、地域に開かれて、日常的に使っている。広島は公設民営の街中型で、規模も非常に大きく、人が交流し、収益化する仕組みも作っていた。非常に参考になった」と話す。 長崎県ではジャパネットホールディングスが総工費900億円をかけた長崎スタジアムシティを10月に開業予定、エディオンピースウイング広島は行政が主導して総額270億円で建設、今治は元日本代表監督の岡田武史氏がリーダーシップを発揮している。富山では今のところ、有力企業や人物、自治体など、強力な推進力が見当たらず、スタジアム建設に向けて大きな機運は高まっていないのが実情だ。横井専務理事は「昔なら行政がポンとお金を出して、完成すればOKでしたが、今の時代ではみんなが納得しない。皆さんに支持してもらえるものを作るにはどうしたらいいのか、いくつもの手順を踏んでいる。ゆくゆくは署名活動をして、皆さんが賛同してくれないと実現はしない。時間をかけて、やっていくことで、協力者や理解者は増えていくと思っています」と話す。 同委員会では、スタジアム完成まで5~10年を想定する。息の長い活動となりそうな一方で、J3カターレ富山は今季のルヴァン杯で、J1神戸戦では8223人、J1札幌戦では7701人を集客した。横井専務理事は「カターレにポテンシャルがあると感じているし、J2に昇格するとなれば、そのタイミングで一気に、ということもある。周囲ではスタジアム建設の話もよく聞かれるようになった」と前向きに捉える。地道に活動を続けながら、今後は9月9日に会合を開催、12月頃までに新たな方向性を打ち出す予定だ。(中田 康博)
報知新聞社