田中麗奈に再ブレイクの予感 『ブギウギ』『いちばんすきな花』で想像させる人生の陰
華やかさの裏にどこか謎めいた雰囲気を持つおミネ(田中麗奈)
『ブギウギ』で演じるおミネはそれとは対照的な役柄で、見ず知らずの、かつ「東京ブギウギ」で一躍スターとなったスズ子に直接文句を言いにくる豪快な人物だ。その際も律儀に自らの通り名を明かすなど、きっぷのいい江戸っ子という第一印象を抱いた。だが、彼女にも夜の街に立たなければならなかった事情があるはずで、華やかさの裏にどこか謎めいた雰囲気を持つ。 スズ子は取材の中で街娼の生き方にも理解を示したが、それが却って苦労してきたおミネには舐められているように感じたのかもしれない。しかし、スズ子もまた戦時下を共に生き抜いた愛助(水上恒司)を亡くし、まだ乳飲み子である愛子を抱えて舞台に立ち続ける苦労人だ。街娼たちがついていくようなおミネなら、スズ子が事情を話せば分かってくれそうな気もする。 犬の殺処分問題を題材にした『犬部!』(2021年)や、関東大震災後の混乱期に発生した虐殺事件を描く『福田村事件』(2023年)など、観る人にさまざまな問いを投げかける作品への出演が相次ぐ田中。今回も彼女が体現するおミネの生き方は、時代背景は異なれど、女性の貧困や路上裏での売春が社会問題となっている現代に一石を投じるのではないだろうか。
苫とり子