「『SHOGUN』の中に黒人はいるのか?」多様性をギモン視されても…アメリカで“日本の時代劇”が大ヒットしたワケ
翻せば、これまで、日本人が登場するハリウッドのエンターテインメント作品は“オーセンティック”とは言い難かった。ある日本人のハリウッド女優は「日本人アクターに与えられる役柄は、アメリカ人の視点で見たステレオタイプの日本人が多い」と“ハリウッドが描く日本”を疑問視していた。なるほど、と思った。例えば、髪の毛を7:3にキチンと整え、黒縁の眼鏡をかけたスーツ姿の日本人ビジネスマンが深くお辞儀するシーンなどをハリウッド作品の中で目にしたことがある人もいるのではないか? アメリカ人の視点では、日本人男性は「よく働く礼儀正しいビジネスマン」とステレオタイプ視しているからだろう。役柄で行くと、庭師という役が日本人男優に与えられているのも目にするが、1900年代前半にアメリカに移住した日本人男性は庭師になった人が数多くいたからだろう。しかし、日本というと、忍者や芸者に富士山に寿司職人だけではない。ロサンゼルス在住20年になる真田氏も、米国で、日本人が登場する映画やテレビ番組を目にする中で、“ハリウッドが描くオーセンティックではない日本や日本人”にフラストレーションを感じていたに違いない。 オーセンティックな日本、そして、日本人を描くために、真田氏はこれまでのハリウッド作品にない手法を取り入れた。多くのキャストやクルーを日本から招き入れたのだ。真田氏は、当時の日本語の言い回しはもちろん、カツラや衣装、セット、身振りなどの所作をオーセンティックなものにするために、サムライものの映画やテレビ番組に関わった日本人スタッフを起用するほどディテールにこだわったという。
マニュアルの下で細部にこだわって制作
また、エグゼクティブ・プロデューサーのジャスティン・マークス氏は雑誌『エスクァイア』のインタビューで、『SHOGUN』は細心の注意を払って制作されたことを明かしている。 「この作品を作るために、約900ページのインストラクション・マニュアルがありました。それには、メモやミスしたこと、学んだ教訓、制作の過程で私たちが行ったあらゆることが集積されていたのです」 作品作りを一から日本のプロの手に委ねた上に、マニュアルの下で細部にこだわって制作された『SHOGUN』。ハリウッドがこれまで再現したことがなかったオーセンティックな日本や日本人の姿は、アメリカの人々を圧倒した。
【関連記事】
- 渡辺謙でも役所広司でもない…真田広之主演「SHOGUN 将軍」ヒット、かつての“日本人ハリウッド旋風”とは何が違うのか?〈米エミー賞で快挙〉
- 「お祖父様が浅野さんをハリウッドに導いたような」浅野忠信が内田也哉子と語る“北欧系”のルーツ
- ハリウッドで時代劇を初体験…「SHOGUN 将軍」藤役・穂志もえか(28)が明かす、海外で話題になった“意外なシーン”《「結婚してくれ!」とメッセージが届いたり》
- 「全く違う髪型になりそうに」「カメラ回ってる?」と聞いたら…「SHOGUN 将軍」藤役・穂志もえか(28)が異国の現場で乗り越えた“撮影初日のトラブル”
- 「調子の悪い姿も見せないといけない」海外から熱視線「SHOGUN 将軍」藤役・穂志もえか(28)が語る、相撲愛と美意識《撮影のため8カ月滞在したバンクーバーでは…》