不登校の子を持つ親の相談を受ける恩庄澄さん。「親の思いを受け止め、不安をやわらげたい」という（宇治市大久保町、宇治・城陽・久御山教育会館）

　中学校の元教師で、約40年にわたり不登校の問題に向き合ってきた。恩庄澄（きよし）さん（66）は現在、自身が暮らす京都府宇治市を拠点とする「登校拒否の子どもと育つ父母の会」の代表世話人として、不登校の子どもを持つ親の相談に乗っている。「支援を必要とする子どもが『通いたい』と思える学校であってほしい」と願う。 　京都市北区生まれ。大学生の時、教師を目指す学生が集まる自主サークルに所属したことがきっかけで、教師の道に進んだ。宇治市内の複数の市立中学校で三十数年間、社会科を教え、生徒指導も担当した。 　教師1年目の秋、担任するクラスの生徒が不登校になった。保護者から電話があり、「その時に聞いた『子どもが学校に行かない』という言葉が今でも耳に残っている。心が痛かった」。 　当時は1980年代。体罰は当たり前で、不登校の生徒に対しては、教師も地域の人も「甘えている」「親が悪い」との認識を持つ人が多かったという。自身も「その雰囲気に押し流され気味だった」と振り返る。 　そんな時、生徒や保護者の声を丁寧に聴き取り、課題を整理していく先輩教師の姿に衝撃を受けた。現在は立命館大名誉教授で、不登校やいじめ問題を研究する春日井敏之さんだ。「心に寄り添う」とは、こういうことだと感じた。「教師として不登校の問題を究めていこう」と決意した。 　91年、不登校で悩む親らが立ち上げた「父母の会」に世話人として携わった。学校とは異なる場で悩みを抱える親の声を聞き続けた。「不登校は充電期間」「不登校の子どもには驚くような秘めた力がある」などと考えを深めた。 　こうした経験を踏まえ、職場の中学校では、不登校などの課題を抱える生徒を中心とする学校づくりやクラスづくりに努めた。退職後も「父母の会」の活動に携わり、2年前には代表世話人に就いた。 　ただ、不登校の児童生徒が全体を占める割合は今も増加傾向にある。「親の思いをしっかりと受け止め、少しでも不安や悩みをやわらげたい。不登校を経験した若者が語り合える場などもつくっていきたい」と口元を引き締める。宇治市羽戸山。