マ・ドンソクの“必殺とんち”も炸裂! 『犯罪都市 PUNISHMENT』が更新したシリーズ最高値
韓国が誇る大ヒットシリーズ、まさかの第4弾! 『犯罪都市 PUNISHMENT』(2024年)の登場である。しかも本作は、またしてもシリーズ最高値を更新した。事前に何となく胸に抱いていた「さすがに4作目となると厳しいのでは?」「1年に2作くらい公開されていないか?」などの様々な懸念は、マ・ドンソクのパンチ一発で綺麗にブッ飛ばされた。本作はまさしく痛快無比、唯一無二のアクション映画である。 【写真】『犯罪都市 PUNISHMENT』場面カット(多数あり) お話はいつも通りである。マ・ドンソクの怒りの鉄拳が、卑劣な犯罪者を襲う! 基本的には、悪党が暴れる→ドンソクが暴れる→悪党が暴れる→ドンソクが暴れる、この繰り返し。その間にキレのあるギャグが入る。それだけと言えば、それだけだ。しかし、それだけなのに異常に面白いのである。最大の魅力は、やはりシリーズの大黒柱、ドンソクのアクションだ。ドンソクは前作から取り入れたボクシングの動きに磨きをかけており、ヘビー級の巨体が高速で動き回る。このド迫力は他にない。素早く敵のパンチを避け、けん制の左ジャブで隙を作りつつ、必殺の右で仕留める。巨漢がありえない速度で動くので、見ているだけで気持ちがいい。そしてもちろん、本作の戦いはすべて犯罪者vs刑事によるルール無用のデスマッチ。素手のドンソクに対して、今回の犯罪者は元傭兵の極悪人だ。ナイフで襲ってくるのだが、ナイフだけに頼らず、ナイフ+αのアクションで血みどろの大暴れ。筆者はナイフで殺し合っている傭兵をナマで見たことはないが、「もしナイフのプロがヤクザの群れと戦ったら、こういう感じだろなぁ」と思える説得力があった。演じたキム・ムヨルの身体能力の高さに感謝である。 そしてシリーズのお約束、暴力わらしべ長者(悪人を殴って次に殴るべき悪人を聞き出し、徐々に事件の核心に迫る作劇法)も炸裂するのだが……今回は何せ敵がIT犯罪だ。オンラインカジノを使って荒稼ぎをしている連中であり、拳が物理で届かない相手である。おまけにドンソク演じる主人公はデジタルに疎い。劇中でもドンソクの拳を指して「それで解決できる事件か?」というセリフが出てくる。 ところがどっこい、いかにITと言えど、使うのは人間である。シリーズ屈指の“早く死なねぇかなぁバイブス”高めの成り上がりIT野郎が登場し(電子タバコの愛好家。この手の映画で電子タバコを吸っている人は、例外なく嫌な人である)、主にコイツの人間性のせいで、デジタル世界の方から自然かつイイ感じに、ドンソクの射程距離に近づいてくる。都合がいいと思う方もいるかもしれないが、現実の社会でもIT業界で成り上がった者たちが、その終わっている人間性からか勝手に転げ落ちるのをよく見る昨今、このキャラ造詣は逆にリアルだろう。どんなに頑張っても、人間には限界があるのだ。 こうしてITの方からドンソクの拳の届く位置まで来てくれるのに加えて、最後にはスケールのデカい必殺ドンソクとんちも炸裂! これには素直に感心してしまった。スケールの大きさと、暴力の中にさりげなく伏線を隠す脚本もお見事。まさに木を隠すなら森である。そんなドンソクとんちの末に辿り着く最終決戦は、相変わらずのド迫力だ。一応は刑事なので不殺(殺さず)の主人公なのに「今、明らかに人間の顔が全体的にグニャっとなりませんでした?」というカットがあったが、そこすらもご愛嬌ということで。ちなみにギャグも切れ味が良く、今回から復活したチャン・イスも大活躍。求められる役どころを100点満点の面白さで演じている。 「とんでもない暴力と愛嬌の塊であるマ・ドンソクが、高速で悪党をシバく娯楽活劇」。この文字列から想像される映画の理想形がここにある。完璧なんて言葉は滅多に使うものではないが、本作はマ・ドンソク映画としては完璧だ。求めるものが全部ある。シリーズは『8』まで作るそうだが(!)、この調子で進化するなら、是非とも『8』まで行くべきだ。どんどん面白くなる『犯罪都市』シリーズから目が離せない!
加藤よしき