「Bリーグの純粋の稼ぎが62億円。Vリーグは3億程度」選手、クラブ、リーグの観点で大河副会長が語る、バレーボール界の現状<RS of the Year 2023>
契約形態は3つ? 有期雇用の社員選手は、事実上プロ
――プロ野球なら選手は100%が「プロ契約」ですし、JリーグやBリーグもほぼ全員がプロ契約だと思います。Vリーグの選手は一般的にどういう契約、身分なのですか? 大河:契約形態は大きく言うと3つあって一つ目は純粋社員選手で親会社の「無期雇用」です。もう一つは有期雇用の社員選手です。1年経ったら切られる可能性があるし、その都度に報酬の交渉があるから、事実上プロですよね。さらに個人事業主という完全なプロがいます。 ――有期雇用と個人事業主は、社会保険とか福利厚生があるかどうかですか? 大河:有期雇用はそういう意味だと社員です。とはいえ1年とか2年の契約だし、オフィスには来ないし、期限がきたら会社には原則として戻らない。会社から見たらやっぱりプロですよね。個人事業主は業務委託で、JリーグやBリーグ、プロ野球と同じです。だから一人一人確定申告もする。 やれる間はバレーボールをやって、競技生活が終わったら会社でしっかり働く社員選手は決して悪くない制度だと思います。ただ今年1月に全日本女子の監督でヴィクトリーナ姫路のオーナーでもある眞鍋(政義)さんと食事をしたとき、「女子のほうがプロになりやすい。社員でも終わったら辞める人がほとんどだから、現役時代に給料を出せる選手にはもっと出してあげればいい」という話をされていましたね。
Vリーグの勢力図は圧倒的に「企業チーム」
――Vリーグを見たとき、企業チームとクラブチームの勢力図はどうですか? 大河:勢力図はもう圧倒的に企業です。クラブチームも、男子ならVC長野トライデンツと東京グレートベアーズが1部にいます。大分三好ヴァイセアドラーは医療法人が主体になっていますが、ここも伝統的な企業チームとは成り立ち、背景が違います。ただ今季の上位7チームは企業チームです。大阪にパナソニックパンサーズ、サントリーサンバーズ、堺ブレイザーズ(日本製鉄)と3つあって、愛知にウルフドッグス名古屋(豊田合成)とジェイテクトSTINGSがあって、あとは三島の東レアローズ、JTサンダーズ広島。この7チームの意向はどうしても強く働きますね。 ――日本製鉄(旧新日本製鉄)は社会人野球でも2000年代に「広域複合企業チーム」というクラブチームに近い形態に変えましたけど、堺ブレイザーズも別法人ですよね? 大河:株式会社ですね。いわゆる鉄鋼不況があって、新日鉄堺バレーボール部の存続が危ぶまれたとき、(支出を)福利厚生でなく、広告宣伝費扱いに変えるために運営法人を作ったと聞いています。 ――パナソニックも「パナソニックスポーツ」が分社化していますね。 大河:分社化して、パナソニックスポーツの下にサッカーのガンバ大阪もぶら下がっていますね、正確に言うと、ガンバ大阪とその他のスポーツで別れていて、その他のスポーツにラグビー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)やバレーボール、野球部などが入っています。あとはウルフドッグス名古屋と東京グレートベアーズ、VC長野トライデンツも法人化していると思います。女子だと久光スプリングスやヴィクトリーナ姫路がそうですね。ラグビー事業の大赤字を見て分社化に尻込みする会社があるようですけど、「バレーボールだけでも独立させたほうがいい」と思っています。 ――バスケでは企業チームがプロ化に反対した経緯がありましたけど、バレーではどうですか? 大河:分社化したパナソニックや堺ブレイザーズも、分社化はしてないサントリーも、事業責任者の方に会うと「Vリーグには変わってほしい」という期待感を感じます。すでにプロで旧bjリーグみたいなチームと、企業のバレー部だけど変わっていくべきだよねと考えるチームと、今までのままでいいというチームで、3つの温度感に分かれますね。 ――VC長野や、北海道のチームが「旧bj」的なプロチームですか? 大河:VC長野はまだ行ったこと、お会いしたことがありません。北海道の2チームは頑張っていますね。サフィルヴァ北海道と、ヴォレアス北海道というチームがあって、サフィルヴァは三木智弘さんという東京大学を休学している若い方が代表です。ヴォレアスの池田憲士郎社長は、Vリーグのいろんなチームの中で一番スポーツビジネスに一家言ある人じゃないかなと思いますね。 ただV2が可哀想なのは集中開催が多くて、6~8試合、3~4週末しかホームアリーナでのゲームがないことです。土曜に川崎の小さい施設でやったと思ったら、翌日は川越みたいなスケジュールで。