「Bリーグの純粋の稼ぎが62億円。Vリーグは3億程度」選手、クラブ、リーグの観点で大河副会長が語る、バレーボール界の現状<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、Vリーグの大河正明副会長がバレーボール界の可能性について語ったインタビュー記事だ。 (2023年4月5日公開) =================================
日本バレーボールリーグ機構は、2024-25シーズンからの中期計画「V.LEAGUE REBORN」を発表。現行のリーグを再編し、チーム名にはホームタウン名を入れ、ライセンス制度を設けることなどが掲げられた。改革の旗振り役を務める大河正明副会長に、選手、クラブ、リーグそれぞれの観点で、Vリーグの「現状」と「未来」について話を聞いた。 (インタビュー・構成=大島和人、撮影=松岡健三郎)
Vリーグには「プロ」と「ノンプロ」の対立軸がある
大河正明が2022年9月に日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ)の副会長となっておおよそ半年。彼は2024-25シーズンからの中期計画「V.LEAGUE REBORN」の策定にも関わり、改革の旗振り役になっている。 理想と現実が合致していなかったら、競技ごとの違いを無視したら、改革は絵に描いた餅になる。しかし大河は元銀行員で経済界に広い人脈を持ち、Bリーグの草創期にチェアマンを努め、Jリーグでも幹部を務めた専門家だ。企業側の視点に加えてガバナンス、スポーツビジネスを熟知する彼だからこそ見えるバレー界の現実がある。 わかりやすく言えば現行のVリーグにはラグビーやハンドボールと同様に「プロ」と「ノンプロ」の対立軸がある。選手個々の身分もそうだが、チームが法人として独立化しているか、社内の一部門として活動しているかは大きな違いだ。Vリーグにもプロのクラブはあるが、上位を占めているのは企業チームだ。 見過ごされがちなのはリーグ組織の重要性だ。選手個々や代表チームを見れば、バレーはバスケットボール以上の認知度を持っている。しかしリーグの「稼ぐ力」を比較すると、大きな差をつけられている。先立つものがなければプロモーションも打てないし、各クラブの経営を安定させるための分配金も出せない。意思決定のプロセスも、改善が必要だ。 大河副会長に選手、クラブ、リーグの3ポイントについてVリーグの「現状」を語ってもらった。