新車が全然買えないからといって、ディーラーの「抽選販売」はアリなのか? 「お得意様が買えない」と嘆く営業マンの声
供給力と需要の不一致
最近は、一部の新車を買いたくてもなかなか買えない。その最大の理由は、メーカーの生産能力の限界も含めた「供給力」が、市場の「需要」とマッチしていないからだろう。そのため、購入できるユーザーを限定する「抽選販売方式」で販売されているクルマもある。こうしたメーカーの施策の影響を、販売の最前線にいるディーラーはどう感じているのだろうか。 【画像】えっ…! これが自動車ディーラーの「年収」です(計13枚) かつては、顧客が新車を購入しようと思ったら、ディーラーにふらっと行き、実車を見て、試乗し、見積もりを出してもらい、商談し、注文書に署名・押印して終わりだった。多くのクルマはこのようにして購入できるが、車種によってはそうではない。 いわゆる台数限定の特別仕様車の場合、メーカーが生産できる台数が限られているため、顧客は販売代理店であるディーラーを通じて「商談権」を得るための抽選に申し込む。抽選に当たった人だけがそのクルマを購入できる、というスキームだ。 しかし現在では、限定車以外でも商談権の抽選があり、注文しても納車まで数年待たされることもある。トヨタ・ランドクルーザーや日産GT-Rがその代表例だ。人気車種になればなるほど、日本だけでなく海外でも購入が難しくなる。
大衆車も長期待ち
なぜこのような事態になったのかを振り返ってみると、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大が原因だろう。これにより世界は“鎖国”状態となり、自動車製造に必要な半導体などの物流が滞った。 当時を振り返ると、通常であれば注文から納車まで1か月程度で済むいわゆる「大衆車」ですら、納車まで3か月、半年、あるいは1年という長い待ち時間が発生していた。 筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)がかつて勤めていたディーラーを12か月点検で訪れた際、元同僚から 「買い換えるなら今すぐ注文しないと来年の車検に間に合わないかもしれない」 といわれたことを今でも鮮明に覚えている。コロナ前ならせいぜい2か月待てば買えたクルマが、1年待たないと買えないとわかったときのショックは大きかった。 本社が用意した見込み客リストは、主に「車検が来る半年前のクルマ」で構成されていたが、「このリストはまったく意味がない」といっていたことも脳裏に焼き付いている。