「招かれざる客」の対応も“総務部の仕事”…総務が受付時にやっている「お断り」の方法
“会社の事務業務のすべて”を取り扱う部門、「総務部」。他部門から「何でも屋」と認識されることもある一方で、どんな仕事をする部署か?と改めて問われると、パッと答えられる人は多くありません。総務の仕事は多岐にわたります。本稿では、下條一郎氏の著書『図解でわかる 総務部員の基礎知識』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、総務の「社外に対する仕事」の具体例を見ていきましょう。
【対社外の仕事】外部との渉外役
■「会社の顔」としての役割 総務部の渉外機能として、まず受付があります。社外と社内の接点となる受付は、社内に対してはサービス機能を果たすものですが、社外に対しては「会社の顔」としての役割を持ちます。その管理は総務部の重要な役割です。 また、会社に対する各種の問い合わせや苦情、勧誘、提案、取材要請、資料等の提供依頼なども総務部に入ることが多く、速やかに関係部門に取り次いだり、直接対処しなければなりません。 実務上では、所轄官庁や法務局、労働基準監督署、公共職業安定所(ハローワーク)等、官公庁への届け出・許認可申請・報告などの渉外業務があります。 こうした渉外業務は関連法規によって定められているものも多く、専門的な事柄については専門家に委託するなり、法務部門や当該部門の協力を得ながら対処します。 ■社内関係部門の代行役 このほか、経済団体・業界団体等との付き合い、株主・投資家に対する広報活動、取引業者との折衝、関係先との冠婚葬祭への対応、中元・歳暮等の贈答業務、地域コミュニティ活動の推進、各種メディアへのパブリシティ活動、学校・学生への情報提供、消費者との対応等、多様な対外折衝機能を有し、会社を代表して、あるいは社内関係部門の代行として、そうした業務を粛々と遂行していきます。
【対社外の仕事】受付での「招かれざる客」への対応
■「会社の顔」には、社外から社内への“関門”としての機能も 総務業務の渉外機能といえば、先述したようにまずは受付です。社内と社外を結ぶ最初の接点となる受付は、社内に対してはサービス機能を果たしますが、社外に対しては会社の顔としての役割を果たします。会社の顔という一面には、社外から社内への“関門”としての機能も含まれています。 受付には、アポイントのある来訪者ばかりでなく、「招かれざる客」が訪れることもあります。会社のスキャンダルを捏造するなどして、金銭を要求してくるなど迷惑な来訪者です。アポイントなしで会社に直接やってきた相手と受付で長く押し問答していては、他の来訪者に不審に思われます。この応対は総務部長や課長に任せ、できれば受付近くの別室に案内します。 こうした訪問者の要求を断わるにしても、上手に断わることです。そのためには、まず丁重な姿勢で応対し、間違っても萎縮するような態度を取らないことです。 そして毅然とした態度で、「それでは当社の顧問弁護士立ち会いのもと、お話をうかがいます」などと事前に取り決めている会社の対応方針に基づき応対します。このとき、言質を取られないためにも、不用意な発言は控えるべきです。 また、万一に備えて部屋の近くに、それとなく警備担当者を待機させておくことも必要です。 -------------------------------------------- <「招かれざる客」の主なタイプ> ●会社の不祥事を捏造し、金銭を要求 ●機関誌の購読や広告掲載の要求 ●不要な物品の購入の要求 ●名目不明の寄付金・賛助金の要求 <断わるときのポイント> (1)受付で押し問答せず、総務部長・総務課長に対応を任せる→受付近くの別室へ案内 (2)断わるときは、ぐずぐず引き延ばさず、早めにきっぱりと (3)できるだけ丁重な姿勢で。決して相手を見下すような態度は取らない (4)なおかつ毅然とした態度で、終始一貫した会社としての対応方針に基づく (5)言質を取られないためにも、不用意な発言は一切控える (6)万一に備えて、部屋の外に警備担当者を待機させる (7)常にリスクマネジメントの視点を忘れず、反社会的勢力等については、地元警察との連携も含めて日ごろから対策を練っておく -------------------------------------------- 下條 一郎 元「月刊総務」代表兼編集長。東京都立九段高校、立命館大学文学部卒業後、株式会社池田書店入社。同社で書籍や雑誌の編集等を経た後「月刊総務」の出版権を引き継ぎ独立、株式会社現代経営研究会を創業。同誌を日本唯一の総務専門誌に育て上げる。同誌発行の傍ら、総務実務等のセミナー講師、経営やビジネス実務に関する勉強会を主宰。上場企業経営者をはじめ著名作家、大学教授、メディア関係者等多彩な人的ネットワークを持つ。総務およびビジネスマナー等ビジネス実務に関する書籍を多数執筆。
下條 一郎