「金利4%の3ヵ月定期」得られる金利はいくら?…金融機関の商品開発「客は情弱」が大前提【経済評論家が解説】
注意! 商品は客の「情弱っぷり」を見越した設計になっている
投資信託の販売手数料を3%だとすると、100万円の投資信託を売った手数料は3万円です。客に1万円の金利を払うと、銀行の利益は差し引き2万円です。客は、3万円の手数料を払って8,000円弱の金利を受け取るので、差し引き2万2,000円強の出費です。差額の2,000円強は税務署の収入です。 これは大変もったいないことです。わざわざ税務署に「献金」するような商品パッケージになっているわけですから。もしも客の多くが情報強者であるならば、銀行は別の商品設計をしたでしょう。 たとえば「100万円以上の投資信託を買って下さった方には、2.1%という優遇手数料率を適用します」というものです。銀行の収入は2万1,000円、顧客の出費も2万1,000円、税務署の収入はゼロになるでしょう。 銀行にとっても客にとっても有利な商品パッケージが採用されないということは、銀行が「客の多くは情弱だから、高金利定期のほうが投信が売れるだろう」と考えているのでしょう。 筆者としては、どこかの金融機関が「手数料率2.1%キャンペーン」を実施して、そこに多くの客が流れていくことで、多くの銀行が「顧客は情報弱者ではなく情報強者のようだ。わが銀行でも商品パッケージを考え直そう」と考えてくれるようになれば…と期待しているのですが。
銀行、投信等の「販売手数料収入獲得」にフルスロットル
余談ですが、銀行が投資信託や保険等の販売手数料ビジネスに注力している事情も知っておきましょう。それは、本業(低い金利で預金を預かり、高い金利で貸出をして、金利差で儲ける)が儲からないからです。 ゼロ成長時代なので、設備投資をする企業は多くありません。そこで、設備投資資金を借りる代わりに「利益のうちで配当に使わなかった分は銀行借り入れの返済に使う」という企業が多いのです。 銀行としては、貸し出しビジネスが減ってしまうのは苦しいので、金利を下げて他行から客を奪おうとしますが、他行も同様に金利を下げるので、貸出金利が下がるばかりで貸出量が増えないのです。 預金については、集めなくても他の銀行から金利ゼロで資金を借りて来ることができるわけで、預金部門は不要なのですが、解散してしまうわけにも行きません。 そこで、預金の顧客に投資信託や保険を売って、せめて手数料を稼ごうとしているわけです。預金の窓口であれば、だれがいくら持っていて、いつ退職金が振り込まれたのかを知っているので、他の金融機関より圧倒的に有利な商売ができるでしょうから。 本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義