中国恒大集団に清算命令 このままでは政争になる可能性も
中国の損失はGDPの2倍に ~手当てを先送りしてきた中国政府
宮家)もう10年ぐらい前でしょうか。ある程度、このようなことが起きると予測できたとき、中国の人と話したところ「俺たちは日本のバブル崩壊を詳細に研究しているから大丈夫だ」と言っていたのです。当時「そうかな?」と私は思いました。でも、これは今や氷山の一角であり、これから氷山がすべて出てくるわけです。しかも不良債権化しているのですから、日本とは桁が違うのではないでしょうか。 高橋)私は不良債権のさまざまな裁判に出ているから、(中国でも)有名なようで、中国政府に呼ばれたことがあります。 宮家)(中国政府は)高橋さんを研究していたのですよ。 高橋)その際、「司法で最初に破綻を認定するのがスタートだ」と言ったのです。しかし、中国は何もしなかった。 宮家)破綻を認定すると、共産党の評判ないし権威にも関わりかねない。政治的にも先送りしようと思うわけです。いま、実は日本より悪い状況が起きているけれど、政治的に判断を遅らせているのです。 高橋)判断を遅らせても、不良債権が回復することはありません。ざっくり言うと、日本のバブル崩壊の場合、損失は国内総生産(GDP)の約20%だったのですが、世界のなかで比べると標準的です。しかし、中国の損失は200%です。 飯田)GDPの200%、GDPの2倍ですか? 高橋)2倍です。「高橋さんならどう整理しますか?」といろいろな人に言われますが、「海外に逃げるしかない」と言っています。200%になると、とてもではないけれど対応できません。 飯田)全部を表に出したら、ものすごいインフレになってしまうということですよね? 高橋)全部つぶれるか、政争になるのではないでしょうか。
中国社会が混乱し、政争になる可能性も
宮家)中国経済だけでなく、社会全体がおかしくなるわけです。もちろん不良債権の問題もありますが、倒産があり、失業があり、不満を持った若い人たちが街にあふれます。彼らが何をするかと言うと、普通なら革命を起こすわけですよ。そうなれば経済の問題以上に、中国社会で大きな問題になると思います。 飯田)大きすぎてつぶせない状況になるのでしょうか? 高橋)つぶせないと言っても、取り引きできないので、何かしらの形でケリをつけなくてはなりません。いくら先延ばしにしても絶対に解決しません。私が不良債権の業務をする際、いちばん嫌だったのは、殺人などの事件が起こった場合です。私の身の回りにも亡くなった人が多いのです。最後はそのような話になってしまう。 飯田)のっぴきならない話になるのですね。 宮家)中国では殺人だけでなく、政争になる可能性があります。それが心配ですよね。 飯田)地方政府なども開発には相当絡んでいたと言われていますからね。 高橋)先ほど言った200%のうち、多くは地方政府が関連します。 飯田)洒落にならないですね。