オリックスドラフト1位の麦谷祐介が全力疾走に込める思い「人に夢や感動を与えられる選手を目指したい」
岩手県花巻市にキャンパスがある富士大は、冬場は雪が積もってグラウンドでの練習ができなくなる。ただし、富士大スポーツセンターという広大な室内練習施設があり、選手たちが野球に打ち込む環境が整っている。 周囲に娯楽施設などないなか、麦谷はスポーツセンターが施錠するギリギリまで粘って練習を重ねてきた。麦谷は以前、こんなことも語っている。 「遊ぶ気にもならないので、今年は野球に執着してやっていきます」 もし、富士大に進んでいなかったら、どんな22歳になっていたと思うか。そう尋ねると、麦谷は苦笑交じりにこう答えた。 「野球をやめていれば、普通に働いていたかもしれませんね。僕に声をかけてくれて、育ててくれた安田(慎太郎)監督やスタッフの方々には感謝していますし、これからも恩返ししていきたいです」 囲み取材を終えて会見場をあとにする間際、麦谷はクルリと踵を返して、鈴なりの報道陣に向かって「ありがとうございました!」と大声で礼を述べた。 華やかな世界でこそ輝く男。麦谷祐介はオリックス・バファローズに新たな魂を注入するはずだ。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro