《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
月に「社会」を作る
地球における限界を乗り越えて文化や能力を発展させていく上で、最も地球に近い天体である月は、人類にとって最初に開発すべき場所です。私たちが月面で持続可能な「社会」を作り上げることができないのであれば、さらに遠い火星やその先の宇宙に到達することも不可能です。月面開発の成否は人類の宇宙進出の試金石となるわけですね。 人類は宇宙ステーションで20年以上にわたって生活をしてきた実績もあります。そこで培われた技術を月に転用できるため、人類が月面に進出する上での技術的な課題は既に多くが克服されていると言っていい。 そもそも人類の進化は居住環境の変化によって促されてきました。約500万年前、アフリカの森からサバンナへ進出した人類の祖先は、二足歩行を獲得し、火や道具を使うことで文化的発展を遂げました。この歴史は、人類が地球を出て宇宙へ進出し、新たな環境に進む状況と重なります。 地球を拠点として宇宙に進出し、そこから新たな挑戦を続けていく。いま、私たちはその最初の一歩を踏み出す時代に生きているのです。 取材・文/稲泉連 ※週刊ポスト2024年11月29日号