自民惨敗は当たり前だった!「政治とカネ」も生煮え、持論の「日米地位協定見直し」も封印で選挙突入…結局「石破解散」とは何だったのか?
いったい「あの選挙」は何だったのか…?
自公過半数割れという歴史的大敗を喫した自民党の石破茂総裁だが、この結果は、当然だと思う。なにしろ、優れた政策が何ひとつ示されなかったのだから。 【画像】石破首相の惨敗を予言していた「まさかの写真」 不思議なことがある。そもそも、石破首相は一般的に政策通の論客とされ、とりわけ安全保障問題に強いと考えられていた。 しかし、彼が自民党の総裁選から主張してきた「日米地位協定の見直し」や「東アジア版NATO」の持論は、首相に就任すると早々にひっこめてしまった。 また、小泉進次郎氏が総裁選で目玉政策のように主張していた「解雇規制の緩和」も、バッシングを浴びると具体的な反論もできずに総裁選で惨敗してしまった。 なにより、「政治とカネ」である。今回の総選挙が自民党の裏金問題の大逆風を受けていることは最初から分かっていたはずなのに、国民に抜本解決とはほどとおい弥縫策しか提示せず、あげくに裏金非公認議員にまで選挙期間中に2000万円を配ったことを赤旗にスクープされた。 自民惨敗をうけて思うのは、数か月を要した総裁選から総選挙までの政策議論はいったいなんだったのかということだ。私には膨大な時間の浪費だったようにしか思えない。 結局、この国では政策議論というものが煮詰まらない国なのだ。情けない話だが、ここでは、それがなぜなのかを考えざるを得ないだろう。
「できない理由」がズレまくっている
石破茂首相は、東アジア版のNATOとか日米地位協定の見直しとかの持論を就任まもなくひっこめてしまった理由をこう述べた。 「(自民党は)強権独裁政党ではない。総裁になったからといって、総裁選でいったことを全て実現するというのは民主主義政党のやることではない」 この答えがズレまくっていると思うのは私だけだろうか。いずれも相手のあることだからできないのであって、党内の問題ではないだろう。 東アジア版のNATO(北大西洋条約機構)とは、加盟国が他国の攻撃を受けたら、自国が攻撃を受けたのと同じと認識して、すぐさま反撃するというものだ。この他国とはどの国なのか。本当に一緒に反撃してくれる国はあるのか。日本が憲法改正して普通の国になったとしても、仲間になってくれる国がアジアにあるのかということだが、めぼしい国は見当たらないではないか。 地位協定の見直しは、特に相手の大統領がトランプになったなら、「ならば、日米攻守同盟にしよう」と言われるだろう。アメリカが攻撃されたら、日本も一緒に反撃するのだ。湾岸戦争でもアフガン戦争でも出兵しなくて申し訳なかったと詫びを入れ、次は必ず出兵すると誓わなくてはならなくなる。 石破氏の提案に党内から反対があがったのも、相手国の反応を考えてのことだった。石破氏が、これらの主張を述べるとき、問題点を指摘する仲間の議員はいなかったのだろうか。専門家を自認するなら、他の専門家の意見も聞かなくてはならない。役人も専門家だが、役人に聞いても「できません」と言うだけで面白くないというのは分かるが、「なぜできないんだ」と聞き返せば良いだけだ。 一緒に東アジア版NATOの設立や地位協定の見直しに賛同する学者、評論家、コンサルタントを連れていけば、役人との議論も深まるだろう。 御前試合のようになるのが嫌なら、今週は反対論、来週は賛成論を聞いて、賛成論者には反対論者から聞いた問題点をぶつければ良いだろう。 次の総理になるかもしれない政治家に頼まれて、断る学者はいないだろう。 総理になったとたんに持論が封印されほど政策が深堀されていないのは、真に不思議なことである。