自民惨敗は当たり前だった!「政治とカネ」も生煮え、持論の「日米地位協定見直し」も封印で選挙突入…結局「石破解散」とは何だったのか?
反対論を予期しない「経済政策論」
安全保障については、私は常識論しか述べることができないが、常識で分かることが分からない専門家とはなんだろうかと思う。 次に、私の専門の経済政策について考えてみよう。 石破首相は、金融所得課税も法人税引上げもひっこめてしまった。これを主張すれば、株価が下がると言われていたはずだが、実際のそうなってしまったからだ。 どうして、事前に持論を述べたうえで、どういう問題があるのかを仲間の議員(そりの合わない議員にも)や役人や学者などに聞かないのだろうか。 聞けば、当然、実務的な困難や株価が下落する危険について指摘されるだろう。石破首相は、株が下がってもやるんだという覚悟はなかったらしい。 雇用流動化はどうだろうか。小泉進次郎氏が唱えて、人気失速の原因となった。労働者がより高い報酬や労働者としての技能を高めることができる職場に移れば、個人としてもハッピーだし、日本全体でも給与が上がる訳だから良いことだ。 しかし、労働者が自発的に転職するならその通りだが、企業に解雇されて移るのであれば、そうならない。 企業はハッピーになるが、労働者は不幸になる。反対派が、「首切りし放題になる」などと批判するのは当然である。 しかも、これは経済政策としてもメリットがない。企業が、なぜか生産性の低い人に高い賃金を払っている問題があり、年功序列賃金でそうなってしまっているからだろう。企業としては、解雇できれば利益が上がる。しかし、解雇された人はより安い賃金の職場に移るか、失業するかしかないので、利潤と賃金を合計した国民全体の所得は上がらない。 労働市場のより具体的な整備を唱えるべきところ、なぜか解雇規制の話から入るので、これまで散々議論されてきたことをひっくり返してしまう体たらくだった。
なぜ、彼らには「常識」がないのか…?
さて、ここまで話してきたように、これらの政策論は常識で考えればわかることだし、それくらいは、総裁選や選挙などで持論を展開するまえに、勉強しておくべきことだった。 なぜ、それができなかったのか。その深層になにがあるのかを考えていきたいと思う。 後編『「与党過半数割れ」でハッキリと見えた!日本の政治家の「政策論」が深まらない理由…日本政治に巣食う「忖度」と「不勉強」のヤバすぎる病魔の正体』でじっくりと見ていこう。
原田 泰(名古屋商科大学ビジネススクール教授 元日本銀行政策委員会審議委員)