NPB導入のコリジョンルールで試合時間が長くなる?
キャンプ期間中に各球団を回ったNPBの審判団は、捕手の立ち位置、考えられるあらゆるケースで、これがアウト、これがセーフのガイドラインを伝えた。だが、実戦となると審判側が対処に迷うケースが出てくる。例えば、今月2日に行われたオープン戦の横浜DeNA対ヤクルト戦。5回1死三塁からライトへのタッチアッププレーがあって、ヤクルトのライトに入っていた雄平の本塁への送球を、中村は本塁を跨ぐようにして捕球し、その両足の間にスライディングをしてきた走者の柴田にタッチ、判定はアウトとされた。 中村はベース前に立たずにハッキリとホームベースを跨いでおり、厳格に言えばブロックとみなされるプレー。コリジョンルールが適応され、得点を認められるケースだったが、ラミレス監督は抗議をしなかった。だが、これが公式戦ならば間違いなくビデオ判定を求めただろうし、審判団は試合後、映像で再チェックして、現場と映像では見え方が違うことに気づいたという。 勝負のかかった本番には、このような微妙な判定は続出するものと見られている。その場合、厳密な判断を下すため、ビデオ判定が採用されるケースは増えるだろう。選手の安全を守るためのルール変更で、野球が変わるのは仕方ないにしろ、同時に試合時間まで長くなるのならば、NPBもなんらかの対応策を考えておかねばならない。これまでNPBは、試合時間の短縮のためにあらゆる策を講じてきた。暗黙のうちに行われたストライクゾーンの微調整も、そのひとつである。だがこのままならば、その流れにまるで逆流するような新ルールの導入となってしまう。 元千葉ロッテのキャッチャーで評論家の里崎智也氏も、「導入1年目でビデオで見ないと、走路をふさいでいたかどうかの判定が難しいケースは多く出てくると思う。ただNPBではメジャーと違い、チャレンジ制度がないので、試合時間に響くことは間違いないだろう。メジャーでは、ストライク、ボール以外のプレーにはチャレンジ可能で、日本は本塁打とクロスプレーしかないので大丈夫だという声もあるかもしれないが、コリジョンルールもメジャーに習ったものなのだから、回数を制限するチャレンジ制度も同時に導入してみてもいいのではないか」という意見。 おそらく、これが現場関係者の意見の多数だろう。コリジョンルール導入の波紋は、どうも戦術レベルだけに収まりそうにない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)