通常国会が大幅延長 国会の会期とは? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
安保法案の3分の2再可決も視野?
今回の大幅延長の主目的は安倍晋三首相“肝いり”の安全保障関連法案を確実に通したいからです。そもそも会期の延長は折り込み済みでした。当初、6月中には衆議院本会議で可決させて参議院に送るつもりだったのが、衆議院憲法審査会の参考人が与党・自民党推薦の学者も含めて法案を「憲法違反」と発言し、各種世論調査でも法案が国民へ十分説明されていないという声が多く、また失言問題もあって大きく遅れるのが確実になったから、会期も大幅延長へとつながったのです。 ただ与党(自民と公明)は両院で過半数を持っています。だから委員会、本会議ともに数の力で採決すれば確実に成立するはずです。何を恐れているのでしょうか。 やはり主権者の目が日に日に厳しくなっているのが挙げられるでしょう。与党だけで採決すると「強行採決」と強い批判が起きかねない土壌がどうやら醸成されつつあります。そこで野党の維新の党に「賛成してくれ。または反対でもいいから採決には応じてくれ」と要請したものの煮え切らず、民主党も珍しく団結しているので分断は困難となりました。 とはいえ、自民党は7月の中旬頃までに衆議院本会議で可決させるでしょう。問題は参議院。与党では過半数でも「平和」を党是とする公明党が及び腰になる可能性もあり、自民単独では過半数がない、言い換えると野党勢力が衆議院よりは強いため、もめそうです。 衆議院に続いて参議院も強行採決となると、一層批判が強まる恐れもあります。そこで注目されるのが憲法59条の「参議院の60日ルール」です。衆議院通過後60日を経ても参議院が採決しない場合、否決とみなして衆議院の3分の2で再可決できるのです。衆議院は与党で3分の2を持っているのでできます。仮に7月中旬に衆議院を通過したら休日も会期に含まれるので9月中旬には決行できる計算となります。衆参で2発の強行採決を繰り出すより多少は印象が良さそうです。 それでも9月27日まで延ばす必要はありません。おそらく「60日ルールありき」と参議院で野党が攻勢を仕掛けてくるのを避けるためと、夏場に8月15日の「戦後70年首相談話」の発表や、九州電力川内原発の再稼働、米軍普天間飛行場の移設先とされている沖縄県名護市辺野古の埋め立て工事開始など賛否がわかれる課題が目白押しで、余裕を持たせたいという思惑とが合致しているとみられます。 また「60日ルール」を定めた憲法の条文は「衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」であり、みなさなくても構いません。野党がそこを突く戦術に出るかもしれません。