フェラーリ・ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(2) 史上最高なV12サウンド クーペの選択へ疑問?
自動車史上最高といえるV12サウンド
ソフトトップを開くと、フィルターなしの排気音が心地良い。長いシフトレバーを動かし、横へ飛び出た1速を選ぶ。重めのクラッチペダルを緩めると、アクセルレスポンスは想像以上に鋭い。キャブレターのセッテイングは完璧だ。 勢いよく加速させれば、自動車史上最高といえるサウンドに包まれる。低回転域では深く重層的。回転数の上昇とともにトーンを高め、乗り手の背筋をゾクゾクさせながら、壮大にクレッシェンドしていく。ローマのV8サウンドが、単調に思えてしまう。 パワーデリバリーは直線的。粘り強く、2000rpmからレッドライン目がけて迷うことなく吹け上がる。変速の度に、カチカチとシフトレバーがゲートに当たる。 最近、275 GTBを数台運転する機会があったが、GTSの方が全体的にソフト。60年も前のオープンカーだと考えると、操縦性の優秀さに唸ってしまう。 確かに、路面の凹凸で僅かにボディは震える。だが、14インチで扁平率70のミシュランXWXタイヤが、過度な衝撃を丸め込んでくれる。姿勢制御は落ち着いていて、適度にクイックなステアリングはダイレクトだ。 それでも、普段使いは難しいだろう。駐車場でもステアリングは重すぎないが、この時代のフェラーリは、毎日のお買い物を想定して設計されてはいなかった。 他方、ローマ・スパイダーなら、問題なく渋滞混じりの通勤にも対応できるはず。この60年間における、フェラーリ最大の進化だといってもいい。少しひねくれた、まとめ方かもしれないけれど。
フェラーリのFRコンバーチブル 2台のスペック
■フェラーリ・ローマ・スパイダー(欧州仕様) 英国価格:21万838ポンド(約4048万円) 全長:4656mm 全幅:1974mm 全高:1306mm 最高速度:320km/h 0-97km/h加速:3.4秒 燃費:8.8km/L CO2排出量:258g/km 車両重量:1664kg パワートレイン:V型8気筒3855cc ツイン・ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:620ps/5750-7500rpm 最大トルク:77.4kg-m/3000-5750rpm ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動) ■フェラーリ275 GTS (1964~1966年/欧州仕様) 英国価格:5973ポンド(1965年) 全長:4325mm 全幅:1725mm 全高:1245mm 最高速度:241km/h 0-97km/h加速:7.1秒 燃費:-km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:1120kg パワートレイン:V型12気筒3286cc 自然吸気 使用燃料:ガソリン 最高出力:263ps/7000rpm 最大トルク:-kg-m ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)
サイモン・ハックナル(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)