センバツ2023 2回戦 履正社、夏に勝て /大阪
第95回記念センバツ大会第6日の24日、履正社は第3試合の2回戦で、高知(高知)に2―3と逆転負けを喫し、準優勝した2017年の第89回大会以来のセンバツ初戦突破はならなかった(20年の交流試合を除く)。だが、終盤に勝ち越し、勝利まであと一歩に迫った選手たちには、三塁側アルプススタンドを埋めた応援団から温かい拍手と声援が送られた。【山口一朗、戸田紗友莉】 甲子園の照明が舞い上がった打球をとらえた。1点を追う九回2死一、二塁。4番・坂根葉矢斗(3年)の内野フライを、高知の三塁手が少しよろけながらも、しっかりと捕球すると、在校生約500人や保護者らが埋めた履正社応援席から一瞬ため息がもれた。だが、すぐに選手たちへのねぎらいに変わった。 この日は背番号「1」となった左腕・福田幸之介(同)が公式戦初先発。昨秋までは控え投手だったが「マウンドに立ったら自分がエース」との思いで投げ続けてきた。ボール先行の展開に母寿子さん(43)は「制球がいい方ではないけど緊張しているのかな」と心配顔。味方の守備の乱れから二回裏に無安打で先制を許したものの、八回途中まで被安打1と好投した。 反撃は1点を奪われた直後の三回表2死から。西稜太(3年)、主将の森沢拓海(同)の1、2番コンビの連打などで追いついた。森沢はこの日朝、父学さん(47)からの励ましのLINEに「任せとけ」と短い返信をしており、八回の先頭打者として内野安打で出塁。森田大翔(3年)の中前打と、坂根の左犠飛で生還し、勝ち越しのホームを踏んだ。 しかし、その裏、高知打線に2安打などで逆転を許した。 森沢は「大事なところで1本を出した高知と、それが打てなかったうちの差。この差を埋められるように、日ごろから練習して夏にも出てきたい」と語った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇すでに前向き 坂根葉矢斗捕手(3年) 母方の祖父母に「甲子園に出るから長生きしてや」と伝えてきた。4番打者として「必ず本塁打を打つ」と決意していた。二回に右前打を放ち、八回には一時勝ち越しとなる左犠飛を打った。 だが1点を追う九回2死一、二塁。「上から球をたたこう」と打席に入ったが、2球目の高め速球よりも、少し下にバットが入り、最後の打者となった。試合後、「下を向いている暇はない。春から夏は早い。夏に向けて取り組むしかない」と前を向いた。 コーチ陣は「チームで最もバットを振り込んでいる」と評価する。捕手としても公式戦初先発の福田幸之介(3年)と救援に立った増田壮(同)の両左腕をリードした。八回に逆転されたシーンは「増田の速球が走っていたので、それで押そうと思った。でも、うまく合わされた。結果論だが変化球であれば」と悔やんだ。 そして、「きょう甲子園を初めて経験させてもらった。また夏に出て同じミスをしないようにしたい」と語った。【山口一朗】