照ノ富士の9回目の優勝か、琴ノ若の初優勝か、二人の運命を握るのは綱とり危機の霧島と勝ち越しをかけた翔猿
◆千秋楽前の不戦勝 14日目は珍しい土俵を見ることになった。 照ノ富士が不戦勝のため、結びの一番は霧島と琴ノ若の対戦となった。裁くのは立行司の木村庄之助ではなく、三役格の木村容堂である。「この一番にて本日の打ち止め」と言うのは、木村容堂だった。緊張したことだろう。 豊昇龍が休場とテレビで知り、結びの一番が不戦勝の場合、どこで不戦勝の照ノ富士が土俵に上がり、行司に四股名を呼ばれるのかと思った。私は相撲の資料箱をひっくり返し、大相撲の解説の本を見たが、載っていなかった。 小結・宇良と大関経験者の前頭4枚目・正代が土俵のすみずみまで使う攻防を繰り広げ、正代が負けて、「4勝10敗なんて悲しいよ、正代」と嘆いていたら、呼出が土俵に上がり「不戦勝」と書いた布を掲げた。花道を照ノ富士が歩いてきて土俵に上がり、立行司の木村庄之助に四股名を呼ばれて不戦勝となった。 「不戦勝ははじめてなので、入り方を確認していました」という照ノ富士の情報が、花道のリポーターであるNHKアナウンサーによって伝えられた。その後、2番の取組があり、土俵下に残った照ノ富士の顔がテレビ画面に映り、物足りないような顔に見えた。 14日目の正面解説は照ノ富士の師匠である伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)で、千秋楽前の不戦勝について「(相撲を)取って勝ったほうが良いと思う」と話していた。そして、「だんだん土俵に慣れてきて、自分の相撲が取れてきて良くなってきた」と、照ノ富士について語った。膝よりも腰が悪いそうだ。 テレビ観戦の楽しさのひとつに、解説者とNHKアナウンサーのやりとりがある。滑舌抜群の佐藤洋之アナウンサーが、大関昇進とかいろいろ突っ込んで聞くが、伊勢ヶ濱親方は、「それは審判部が決めることですから」とか正統な返事を繰り返していて、その攻防が面白かった。
◆ちょっとスピード早かったので… 最近、大相撲を見ていて、私は立ち合いの動きの判断ができなくなってきた。これは老化により、動体視力が弱ってきたのだと悩んでいた。 眼科医院に行き、医師に「立ち合いで前みつを取ったのかとか、張り差しをしたのかとか、分からないのです。どうしたら良いですか?」と聞こうと思っていた。かかりつけの医師は、私が大相撲ファンということを知らないので、どう反応するかが心配だった。 ところが、動体視力については、12日目に安心させられた。 実況の大坂敏久アナウンサーが、豊昇龍と前頭12枚目・隆の勝の対戦が終わった後、豊昇龍の立ち合いの動きについて、「左を張った動きは正面から分かったのですが、右の下手は取りましたか?」と、向正面にいる押尾川親方(元関脇・豪風)に聞いた。 コロナ禍の時と違い、向正面の解説は桝席の中で行われている。押尾川親方は、「ちょっとスピード早かったので分かんなかったですね」と答えた。親方でも分からない時があるのだと知り、安心した。 後半戦は、新入幕の前頭15枚目・大の里が好成績で、出世が早くて大銀杏を結えず、ざんばら髪のまま、照ノ富士、大関・豊昇龍、琴ノ若と対戦して上位陣に跳ね返された。しかし大の里は14日目に10勝をあげて立派だ。 今場所は、幕下から見ていて物言いが多く、そのたびに審判の親方たちが、のそのそと土俵に上がる。これは親方たちのエコノミークラス症候群を防ぐのに役に立っているのではないかと思っている。私もテレビ観戦中にたびたび立ち上がり、その場でスキップをしている。 ※「しろぼしマーサ」誕生のきっかけとなった読者体験手記「初代若乃花に魅せられ相撲ファン歴60年。来世こそ男に生まれ変わって大横綱になりたい」はこちら
しろぼしマーサ