「リーチさんの喜んでる顔を見たい」リーチマイケル35歳が後輩たちに慕われまくる理由…キャプテン拒否から一転「ビールをたくさん飲ませ…」
「リーチさんを日本一にしたい」
そんな姿勢が、もうひとつの要因、後輩たちのサポートを呼んだ。CTB眞野泰地とFL佐々木剛は決勝を控えた府中市の練習後に「リーチさんを日本一にしたいんです」と明かした。 ともに2020年加入。眞野は東海大で、佐々木は大東大で、それぞれ主将を務めた。ラグビーにおける主将の重責、難しさを知っているからこそ、リーチの覚悟の強さには深く敬意を抱くのだ。 「ミーティングでリーチさんのプレゼンを聞いていると、この人に日本一になってほしい、喜んでる顔を見たい、と思うんです」(眞野) そしてタックル。主将のリーチを補佐する副将、25歳のフッカー原田衛は決勝のあと、顔を上気させて話した。 「リーチさんの何がすごいってタックルです。ずっとタックルしてる。良いタックルがあったと思うと『またマイケルや』と。どこにでもいる。そこがスゴい」(原田) それもただのタックルではない。前半3分にはトライ体勢に入ったワイルドナイツSH小山大輝にゴールライン上でモウンガとともにダブルタックルを浴びせて落球させた。11分には、やはりトライ体勢に入ったワイルドナイツFB山沢拓也の抱えたボールを押し止めてトライを阻んだ。 試合は開始早々からワイルドナイツが猛攻を見せたが、リーチの「どこにでもいる」タックルが前半のピンチをことごとく摘み、トライを許さなかったことが試合の流れを変えたのだ。 「試合中は自分たちの表情と相手の表情を意識して見ていました。こっちが元気なときは向こうが暗くなって、向こうが元気になるとこっちが暗くなったり。僕はキャプテンとして、トライを取られたときもポジティブな声を出したり、明るい表情で次の方向性を示すことを心がけました。良いプレーがあれば名前を出して『ワーナー、いいジャンプだ』とか、フロントローに『ナイススクラム』とか」
歓喜より堀江を優先「寂しさ半分」
そして迎えた勝利の瞬間。しかし、リーチは喜びをみせなかった。腕を突き上げるでもなく、チームメイトと抱き合うでもなく、滑川剛久レフェリーと握手をかわし、堀江翔太に握手を求め、それから仲間のもとへ向かい、一人一人と静かに握手し、ハグをかわした。 「やっと優勝できてホッとしています。最後は堀江さんとピッチに立てて良かったけど、試合が終わった瞬間は喜び半分、寂しさ半分というか……。僕自身、もっと『ヨッシャー』という声が出るのかなと思ったけど、なんでかな? 堀江さんの最後の試合でしたしね」 ともに4度のワールドカップを戦った戦友にして盟友、堀江への感謝と労いの思いが、無意識のうちに静かな振る舞いをさせたのかもしれない。悲願の優勝を掴んだ35歳は、喜びと安堵を静かにかみしめていた。味わい深い光景だった。 リーグワンが終わると、ラグビーはインターナショナルのシーズンに入る。6月22日には、昨年のワールドカップでも対戦したイングランドとのテストマッチが国立競技場で行われる。6月上旬にはエディー・ジョーンズHCのもと宮崎で日本代表の合宿が始まる。 「合宿には行きます。まだ成長できると思うし、何をすればもっと強くなれるか分かった」 35歳。身体を休める必要はないのか? その問いには即答だった。 「サバティカル(休暇)とか言えるトシじゃない。そんなことを言ったら『もう来なくていい』となるだけですから」 エディー・ジョーンズHCには『ロックをやってほしい』と打診されているという。2月のミニ合宿時は戸惑いを見せていたリーチだが、今は違う。 「ロックもやってみたい。チームでも、僕がロックをやれば若いバックローの選手がもっと試合に出られる。狙いは20番。リザーブでロックもフランカーもできる、ラインアウトのジャンパーもできる」 冗談めかしながら、頭はもう、次のチームに貢献する方法に思いを巡らしていた。 初めての優勝を達成したリーチマイケル。新しい章が始まる。
(「ラグビーPRESS」大友信彦 = 文)
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