【高校野球】鎌倉学園が硬式野球部100周年記念祝賀会 強豪私学ひしめく神奈川で目覚ましい近年の躍進
竹内監督が忘れられない試合
強豪私学はひしめく神奈川において、鎌倉学園高の近年の躍進は目覚ましいものがある。2017年秋に県4位、18、19年春は県4強、18年夏の南神奈川大会では30年ぶりの決勝進出。20年秋は県大会準優勝で、33年ぶりの関東大会へ進出した。同大会では、1勝を挙げて8強。21年のセンバツでは関東地区の補欠校に選ばれた。そして、昨秋の県大会では4強進出。センバツ21世紀枠の県推薦校に6年ぶり4度目(神奈川県最多)の選出となった。 夏の県大会における勝利の「全力校歌」は、神奈川の風物詩として定着。昭和のような「泥臭い野球」を前面にしながらも、生徒たちが考えて動く「大人の野球」が同居している。 武田元監督には「神奈川の中で本当の『文武両道』は、我が校が一番である」と自負があり「今の時代に合わせた、ベストの指導をしている」と、竹内監督に全幅の信頼を寄せる。高校卒業後は大学で野球を続け、竹内監督のように、裏方としてチームの力になるOBも多いのが特徴。プレーする「選手」だけではない。部を動かす「人」を育てているのだ。 竹内監督には、忘れられない試合がある。6度目の夏決勝敗退を喫した2018年夏、横浜高に3対7で敗れた試合後のシーンだ。 「試合に負けて悔しかったですが、感激したんです。横浜高校の校歌斉唱が始まると、カマガク側の応援席から一小節ずつ、心がこもった手拍子が巻き起こりました。球場全体が一つになり、100年の歴史を積み上げてきた神奈川の高校野球の素晴らしさに、誇らしく思いました。カマガクで良かった、と」 相手をリスペクトする姿勢に心打たれた。竹内監督は思い返したように、壇上でこのエピソードを披露すると、涙を流した。相当な熱血漢である。勝負の世界に身を置いている以上、求めるのはあくまでも「結果」である。 「あのグラウンドから甲子園に行くことが、私たちのアイデンティティーとしてある。カマガクのスタンドをつくってくれる方々のために、甲子園で一緒に校歌を歌いたい」と、決意を新たにした。一方、教育者の顔もある。 「自分としては99年目、100年目、101年目も変わらない熱量で生徒たちと接してきたつもりです。一人でも多くの生徒が『カマガクで良かった』と言ってもらえる3年間を過ごしてほしいです。それ以上の幸せはない」 この日の記念祝賀会には約150人の野球部OBが出席したが、20~30代の卒業生の姿が目立った。竹内監督の人望の厚さにほかならない。パーティー後は、すぐに現実に戻った。 「秋の結果は出来すぎです。対外試合解禁後の初戦となる3月8日まであと47日。1日、1日、その日に向けて準備していきたい」 武田副校長は「秋も良いチームに仕上げてきました。ただ、夏を勝ち進めるかは別問題。総合力がないと、夏の神奈川は勝てない。ワンランク、2ランクレベルアップしないと厳しい部分はある。総合力で戦えるチームを育ててほしい。私が学校にいる間は、バックアップしていきたいと思います」と、全面サポートを約束。すぐ横で竹内監督は恩師の熱い言葉に耳を傾け、背筋を伸ばした。明日からまた、学校、グラウンドで全力で勝負する。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール