本田圭佑が8年前に西野Jを重ねる「一発目のシュートが決まる気がする」
初体験の1トップだったにもかかわらず、8年前はカメルーン代表とのグループリーグ初戦で決勝点をゲット。自信を失い気味だった岡田ジャパンを波に乗せると、決勝トーナメント進出がかかったデンマーク代表との最終戦でも、直接フリーキックから貴重な先制点を叩き込んで勝利に導いた。 「たまたまビッグゲームで結果を出してきた、というのは運がよかった部分がある。ただ、ずっと求めていたからこそ、そういう結果を出せたという自負もある」 日の丸を背負ってワールドカップの舞台で活躍する、と強く念じ続けたからこそ南アフリカの地でまばゆい輝きを放ち、日本代表における大黒柱の座も俊輔から引き継いだ。 しかし、30歳を超えて、当時所属していたセリエAのACミランで出場機会が激減。ハリルジャパンでも居場所を失い、約半年ぶりの招集となった3月のベルギー遠征でも目立った結果は残せなかった矢先に、日本代表チームそのものにメスが入れられた。 「今回も同じように一発目のシュートが決まる気もするし、そういうのを決めないと話にならないと思っているので。これまでもぶっつけ本番で結果を出してきたことが何度もあるし、いろいろなシチュエーションを想像する、というところは自分の強みのひとつだと思っているので」 1トップに入る大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)の後方で、宇佐美貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)と並んで攻撃を仕掛ける。限られた時間のなかで可能性を膨らませるために、ポジションの近い選手同士で活発な議論がピッチ上で、そしてピッチを離れても交わされている。 そこには、指揮官が電撃的に代わった動揺はない、と本田は言う。 岡田監督のもとで低空飛行を続けた8年前も、選手だけで集まった部屋で「オレたちは弱い」と現実を受け入れ、体を張って泥臭く守り、乾坤一擲の速攻に託す戦い方を共有した。開き直りにも近い危機感は、いま現在にも通じる。 「そういうふう(ネガティブ)には思わないですね。実際、選手たちはみんな前を向いていますし、これだけ前向きな議論が出るのも、ハリルホジッチ監督のときにはなかったことですから。その意味ではやりやすくなってきたし、すごくポジティブな部分も感じています」 ピッチの内外で厳格で、管理を徹底したハリルホジッチ前監督は、たとえばピッチ上で選手同士が議論を交わし始めるとすぐにストップをかけた。ある選手は「そのあたりのストレスがいまはない」と言う。その場その場で問題を解決しながら、西野ジャパンは少しずつ前へ進んでいる。 ガーナ戦から一夜明けた31日午後にはロシア大会に臨む23人の正式メンバーが発表され、6月2日には直前合宿地のオーストリア・インスブルックへ向けて出発する。泣いても笑っても、強敵コロンビア代表とのグループリーグ初戦が行われる6月19日が刻一刻と近づいてくる。 胸中を問われた本田は、アルベルト・ザッケローニ監督のもとで4年間を費やし、絶対の自信をもって臨んだ前回ブラジル大会のほうが「ワクワクしていた」と明かしたうえで、こんな言葉を紡いだ。 「前々回のほうが、精神的には少し近いですかね。じたばたしても仕方がないという状況でしたし、覚悟を決めて、とにかく冷静に(大会へ)入ることだけに集中していた。今回もじたばたしている状況であるのは間違いなく、だからといってプレッシャーを感じても仕方がないので」 デジャブの先に待つのは8年前の再現か。あるいは、現実を見せつけられての完敗か。船出したばかりの西野ジャパンのなかで、本田が指摘した3つの思い、危機感と焦燥感、そして使命感がいよいよ化学反応を起こそうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)