教祖の妻や“美人姉妹信者”がワイドショーに…なぜオウムの“暴走”を止められなかったのか?「地下鉄サリン」事件から30年後にみえた“教訓”
筆者の自宅に毒ガスがまかれ…
その後オウムは、各地で住民の家を盗聴したり、批判している人を攻撃したりと、様々な事件を引き起こしていたが、これについても警察の腰は重かった。宮崎県で資産家が拉致され、東京都内の教団施設で監禁された事件では、被害者の訴えを、宮崎県警と警視庁が互いに押しつけ合う言動もあった。信者の親たちで作る被害者の会の永岡弘行会長が化学兵器VXで襲われた際にも、警察は当初、刑事事件として捜査しようとしなかった。筆者(江川)の自宅に毒ガスホスゲンがまかれた件も、捜査されないままだ。 松本サリン事件では、長野県警は被害者である河野義行さん犯人説にこだわり、メディアもそれに乗った。一方で、同県警の中には化学薬品の捜査を行うチームができ、サリンの原材料となる薬品をたどって、オウムのダミー会社を突き止めていた。強制捜査に至らなかったのは、法の不備もあるが、同県警の情報が、もう少し早く警察全体で共有され、共同して捜査を行う体制ができていたら状況は変わっていたかもしれない。
問われるメディアと一部知識人・文化人の責任
当時の法の不備や警察間の連携・協力体制については、事件後に改善された点もある。ただ、警察力がうまく機能しなかった原因は、それだけではないのではないか。被害者の属性によって対応を変えたり、相手が宗教法人であるために、被害の訴えがあっても、尻込み・敬遠・軽視することはなかったか。失敗を繰り返さないためにも、警察自身が十分な検証をし、改善して欲しいが、その動きが見えないのが気がかりだ。 オウムは、坂本事件で疑惑を向けられた時期を乗り切ると、急速に人や金を集めて教勢を拡大。武装化の資金や労働力を得た。これに関しては、教団の反社会的体質を覆い隠したメディアと一部知識人・文化人の責任も問われるべきだろう。 とりわけテレビは、かねてから超能力や「ノストラダムスの大予言」などを取り上げるオカルト番組を盛んに放送してきた。こうした番組は、若者たちが麻原の超能力やハルマゲドン言説をすんなり受け入れる土壌を育んだ。
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