「103万円の壁」で袋小路 手の内見せぬ国民民主、自民ゴルフに例え「グリーンどこ?」
国民民主党の古川元久税調会長は17日の自民、公明両党との「年収103万円の壁」を巡る交渉で、自公側が国民民主の求める178万円まで引き上げるための具体案を示さなかったとして協議を打ち切った。自公側は継続意思を示すが、国民民主側は直近の支持率上昇を受けて「妥協はしない」(幹部)と強気を崩していない。3党協議は再び袋小路に陥った。 ■協議は10分で打ち切り 「話にならない。協議は打ち切りだ」 17日午前11時半に国会内の会議室で始まった自公国の協議。古川氏は開始からわずか10分程度で部屋を出ると、周囲にこう漏らしながら憤懣(ふんまん)やるかたない表情を浮かべた。 国民民主が強硬姿勢に出たのは、3党の幹事長が11日に「103万円の壁」を「178万円を目指して来年から引き上げる」と合意したにもかかわらず、13日に自公側が引き上げ額として123万円を提示したためだ。この数字は国民民主の要求とは程遠く、古川氏や玉木雄一郎代表(役職停止中)ら幹部は、自公側から新たな提案がなければ17日の協議は打ち切る方針をあらかじめ決めていた。 結局、この日の協議では自民の宮沢洋一税調会長が国民民主側との落としどころをゴルフに例えながら、「グリーンがどこにあるのかわからない。交渉できるようにグリーンを教えてほしい」と探った。だが、国民民主側は手の内を明かさず、古川氏は「新たな提案がないのであれば協議はできない」と席を立った。 ■強気の背景に世論の支持 「178万円」以外の数字を国民民主側から示せば、その金額が上限になるとの警戒感が強く、国民民主幹部は「財務省のいつものやり方だ」と怒る。一方、自民税調幹部も「178万円まで一気に引き上げれば税収は7兆~8兆円減る。それは受け入れられない」と不満を漏らす。 国民民主の強気の背景には世論の強い支持がある。報道各社の世論調査では国民民主の支持率が軒並み急騰している。「103万円の壁」を巡る与党との攻防や国会論戦が好感されたとみられており、榛葉賀津也幹事長は17日、国会内で記者団に「国民が一番怒っている」と威嚇した。 さらに、国民民主側には看板政策での実績を引っ提げて来夏の参院選に臨みたいとの思惑があり、簡単に妥協できない事情もある。別の国民民主幹部は「来年の参院選で有権者に問えばいい。『ここまでやったが、少数政党では限界があった。力を与えてほしい』と訴えるだけだ」と突き放した。
こうした袋小路の3党協議を踏まえ、石破茂首相は17日、首相官邸で記者団に国民民主との交渉決裂の可能性を問われ、「それはわからない。引き続き協議をお願いしたい。対応には誠意を持って臨みたい」と述べるにとどめた。(永原慎吾)