「個人のマンパワーではどうにかなる話ではない…」17年前の震災から復興も再び被災…父から受け継ぐ蔵元杜氏の揺れ動く思い・石川県輪島市
1月20日は1年で一番寒さが厳しいとされる「大寒」で、奥能登の酒蔵では大吟醸などの酒の仕込みがはじまる頃でした。17年前の震災から復興した輪島市の酒蔵では、愛好家や地元の人たちが地域の蔵を支えようとする動きが起きていました。 【写真を見る】「個人のマンパワーではどうにかなる話ではない…」17年前の震災から復興も再び被災…父から受け継ぐ蔵元杜氏の揺れ動く思い・石川県輪島市 蔵元杜氏「看板が残ってたのは良かったです…嬉しかったです」 輪島市鳳至町の中島酒造。年間の生産量が1万本と小さな酒蔵を襲った地震は、看板こそ残りましたが、市の景観重要建造物に指定された木造2階建ての酒蔵と母屋が倒壊しました。 蔵元杜氏の中島遼太郎さんは、新酒の仕込みを始めていたところでした。 中島遼太郎さん「まさにこれからというタイミングだった」 ■亡き父が建てた蔵が命を救う 蔵人や家族が生き残れたのは、亡き父が17年前の地震の後に建て直した蔵に避難できたから。しかし… 中島遼太郎さん「蔵の奥の方でお酒がどうなっているのかも確認できないので…もう…個人のマンパワーではどうにかなる話ではないので、どうしようという気持ちしか今はないです」 目の前のことで精一杯という状況のなか、ボランティアの人が無傷の酒米を見つけたことで先への目標が持てたと話します。 中島遼太郎さん「うれしかったです。あぁ、ここにあった…という状態ですよ。本当に全部無くなったなという中にいたので、その中で一個でも見つかった、という…きっかけになりました」 ■取材中に現れた訪問者 取材中、ご近所さんがお酒を買いに来たました。 中島さん「何にしましょう?」 近所の住民「何でもいいよ」 新酒は作れませんが、無事だった数少ない日本酒が住民らの心を支えています。 近所の住民「また頑張ってもらわな」 遼太郎さん「ありがとうございます」 近所の住民は「遼太郎も頑張ってるし…こういう時でしょ。寝れないときがあるんです。」とこぼします。 県酒造組合連合会によりますと、奥能登にある11の酒蔵全てが今年の酒造りが出来ない状態で今後の見通しも立っていないということです。日本4大杜氏のひとつ能登杜氏を擁する酒蔵がいま、岐路を迎えています。
北陸放送