「日本人は劣等民族」以外にもあるジャーナリストの「問題発言」
ビートルズは「エレキのサル」
「エレキ・モンキーというものは騒々しいばかりで、人類進歩の邪魔になる」――これは人気テレビ番組「時事放談」(1966年5月22日放送)で飛び出した発言。出演していたのは、元日本経済新聞社社長の小汀利得(おばまとしえ)氏と、元朝日新聞社編集局長の細川隆元(りゅうげん)氏だ。 彼らの言う「エレキ・モンキー」とは来日を翌月に控えていたザ・ビートルズのことである。あんなものはエレキギターを弾くサルだ、と言い放っていたのだ。よほど憎かったのか、さらにここでは紹介できない放送禁止用語を交えてビートルズを批判。コンサートは日本武道館ではなく「夢の島でやれ!」とも言っていたという。 さすがにこれらの問題発言には日本中から抗議の電話や手紙がテレビ局に殺到。放送した東京放送(TBS)は公演直前に小汀、細川両氏とファンとの討論番組を企画して、事態の収拾を図った。一見無茶苦茶な小汀らの発言だが、こうしたスタンスは当時珍しくなかったようだ。 「GSブームの前夜、ロックは『不良の音楽』だった。一部のジャーナリズムは『アンチ・ビートルズ』の姿勢を取り、『ビートルズなんか殺しちゃえ』「ビートルズ・ゴー・ホーム!』などの中傷記事を書き、武道館周辺にも『青少年を不良化するビートルズを叩き出せ』というヒステリックな看板が立てられたという」(『問題発言』より。以下同)
筑紫哲也氏の問題発言
細川氏らとは異なり、おそらくは青木氏も敬意を表していると推察される大先輩、筑紫哲也氏もいくつかの問題発言で波紋を呼んでいる。1977年11月6日、テレビ朝日の「さて今週は」という番組で筑紫氏(当時、朝日新聞社外報部デスク)は次のようにコメントした。 「そのことと絡めて井上陽水の歌まで否定する一部の意見は間違っている」 この2カ月前、井上陽水は大麻所持容疑で逮捕されていた。いまでも薬物の所持、使用に対して日本の世論やメディアはかなり厳しいのだが、当時は今の比ではない。ここに筑紫氏は違和感を抱いたのだ。 「メディアの異常なバッシング、特に、自分が働く『朝日』が井上の音楽を『麻薬の上に築かれた“砂上の楼閣”』と断じたことが、筑紫の発言を生んだのではないか。同番組でもレギュラーの出演者と論争になった。その同社論説委員は、『君が何を言おうと、私の娘にはそんなものはやってもらいたくない』と筑紫を睨(にら)みつけた」(同) 筑紫氏の主張は今ならば問題発言とはされないかもしれない。「作品に罪はない」という意見は比較的広く受け入れられているからだ。もっとも、筑紫氏はその後、より深刻な問題発言も残している。 「1995年の阪神・淡路大震災の後、筑紫は被災地を『温泉に湯煙が上がっているかのよう』と喩(たと)えて、顰蹙(ひんしゅく)を買った」(同)