山陰合銀、金利復活で国債投資に回帰へ-悩みは松江での専門人材確保
有価証券運用においては経験者の採用も積極化していく。ただ、市場部門を松江市内の本店に置いていることがネックとなり、地方勤務が可能な外部からの採用者がなかなか見つからないという地銀共通の悩みを抱える。現在、市場部門のフロント部隊で勤務する14人のうち2人が他の金融機関からの中途採用だが、どちらも山陰地方の出身者だ。
山崎頭取自身も約20年前に市場部門に在籍したことがあるが、当時は東京に拠点があった。その後、当時の経営陣の判断で松江に移したという。オフィスや行員住居などのコストを圧倒的に低減できるメリットがあるが、採用に加え、担当者が直接情報に触れる機会など、東京にしかない利点も多いというのが同氏の実感だ。
再度、東京に拠点を移転するにはハードルは高いというものの、「有価証券投資は本業の一つ。これでいいのかという悩みはずっとある」と打ち明けた。
預金獲得競争が激化
島根と鳥取の両県は総人口、事業所数とも全国の都道府県で最下位を占める2県。過疎地も多く、地銀で最も不利な地理的条件にある。そうした中、成長ドライバーと位置付けるのは、隣接する広島、岡山、兵庫の3県に加え、東京と大阪での貸し出しだ。
同行の山陰地方の貸出金残高が過去4年間で約1000億円の伸びにとどまったのに対し、それ以外の地域は1兆2000億円以上増え、全体の6割を占める。東京では不動産ノンリコースローンやレバレッジドバイアウト(LBO)などのストラクチャードファイナンスを成長の柱に据える。
こうした貸し出しを伸ばす上で課題に挙げるのが、調達源として「粘着性のある預金の増強」だ。取引の関係性など、金利の多寡だけで動かない顧客からの預金を積み上げることがポイントになる。
同行は山陰地域外での展開を強化するため6年ほど前から積極的に預金を集めてきたが、今年に入り変化が起きた。マイナス金利下でこれまで預金の増加を抑制していた他行が、金利のある世界を見据えて預金獲得に動き始めた。