「ベルばら」作者・池田理代子「自分の信念に忠実に生きようと思った」 24歳の時から変わらない思い
■オスカルの境遇に共感 改めて原作を読み込み、大河ドラマさながらの骨太な展開のおもしろさとともに、現代に通じる物語だと強く感じたという。 「昔はそこまで深く考えず『オスカル美しい、かっこいい!』というイメージでしたが、大人になったいま読むと女性が前に出て、自分で選んで自分の道を切り開いていく話だなと」 キャラクターデザインを担当した岡真里子(51)も同意見だ。やはり原作のファンで絵柄も「できるだけ原作からぶれないように」を意識したという。 「オスカルは性別も性自認も女性ですが、今回はキャラクター造形やシルエットは女性的になりすぎないように、少年のようなしなやかさを描きました」 前出の吉村は言う。 「例えば白目に顔に縦線で『ガーン!』となるタッチなども『真剣にギャグに見えないようにやりきろう』と岡さんと最初に話し合いました。新しく見えるか古く見えるかはさておき、原作を正確に表現したかった」 さらに吉村をはじめクリエーターチームがこだわったのがオスカルを「人間味溢れる人物」として描くことだった。 「原作を読むとオスカルはものすごくケンカっ早いし、平気で酒場で殴り合いをしてボロボロで帰ってきたりするんです」 たしかに本作には令和の時代の我々にも意外なほどに共感ポイントが多い。例えば軍人として仕事に生きてきたオスカルが父親に突然縁談を持ち込まれ「いまさら女として生きろと? 私の人生とはなんだったのだ?」と嘆いたり(あ~!)、衛兵隊長として男性兵士の前に立つと彼らから「女の命令なんざ聞けるか!」とボイコットされたり(ああ~わかる!)。 「まさにいま男性に交じってバリバリ仕事をされている方や、世間の『女性だから』という視線に違和感を持つ方たちに刺さるのでは、と思いました」 そう話すのは冒頭の完成披露試写会に招待され、見事なオスカルの扮装で注目を浴びていたコスプレイヤーのMOMOだ。「ベルばら」との出合いは5、6歳のころ。当時からオスカルの生き様や精神的な美しさに惹かれたという。 「私の時代のヒロインは『可愛くて男性に守られるプリンセスタイプ』が多かった。小6で身長160センチあった私には自分を投影できる対象がなかったんです。それにいまこそLGBTQやジェンダーの意識は上がってきましたが、そういう意識がない時代にオスカルのようなヒロインの登場はかなりセンセーショナルだったと思います」 (フリーランス記者・中村千晶) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より抜粋
中村千晶