米株式市場は、Ｓ＆Ｐ総合５００種指数が４月に５％下落して今年初の本格的な調整局面を迎えたが、その後は反発、年初来で９％余りのプラスとなり、３月下旬に付けた史上最高値に迫った。この勢いを持続できるかどうかは、１２日からの週に発表される物価統計で決まりそうだ。写真はニューヨーク証券取引所で２０２２年１１月撮影（２０２４年　ロイター／Andrew Kelly）

(１３日に配信した記事で、英文の訂正により、本文６段落目の「４月ＣＰＩは前月比０．３％の上昇」を「０．４％の上昇」に訂正します) Lewis Krauskopf [ニューヨーク １０日 ロイター] - 米株式市場は、指標となるＳ＆Ｐ総合５００種指数が４月に５％下落して今年初の本格的な調整局面を迎えたが、その後は今決算シーズンの好調な業績と巨大ＩＴ企業発の明るい材料を追い風に反発、年初来で９％余りのプラスとなり、３月下旬に付けた史上最高値に迫った。この勢いを持続できるかどうかは、１２日からの週に発表される物価統計で決まりそうだ。 米企業は第１・四半期決算が予想以上に好調だった。ＬＳＥＧ・ＩＢＥＳによると、これまでにＳ＆Ｐ５００種構成企業の８０％余りが決算を発表済みで、利益の伸びは４月時点の予想の５．１％を大きく上回る７．８％となる見込み。 それでも投資家の中には、インフレが再度沈静化していることを示す材料がなければ相場が失速するのではないかとの不安がある。米連邦準備理事会（ＦＲＢ）のパウエル議長はすぐに利上げに動く可能性は低いと述べて市場に安心感を与えているが、数カ月にわたり強いインフレ統計が続き、政策立案者が年内の利下げを見送るのではないかという懸念は根強い。 Ｂライリー・ウェルスのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、好調な企業業績を背景に「投資家は今の相場に安心感を抱いている」が、「ＦＲＢの次の一手が利下げだと予想されるサイクルにある間は、インフレの動向が常に重要だ」と指摘した。 ＦＲＢは２０２２年に４０年ぶりの高水準を記録した消費者物価指数（ＣＰＩ）を抑制すべく政策金利を引き上げてきた。ただ、直近では４月１０日に発表された３月ＣＰＩが３カ月連続で予想を上回ったことで、ＦＲＢが年内に利上げに動くのではないかという懸念が高まり、株価は約２週間にわたり下落した。 ロイター調査によると、１５日発表の４月ＣＰＩは前月比０．４％の上昇（訂正）と予想されている。投資家は４月の小売売上高のほか、ウォルマート、ホーム・デポ、シスコの決算にも注目している。 ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ・インベストメント・ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「もし４月ＣＰＩが高い水準になれば、年内の利下げは見送られる公算が大きい。（インフレ率が）予想を大幅に上回れば、より引き締め的な政策について検討し始める必要があるかもしれない」と述べた。 ＜企業業績は追い風＞ 今のところ強気の投資家は堅調な決算に自信を得ている。いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米巨大ハイテク企業や成長大企業が発表した決算は総じて好調だった。例えば、アルファベットは売上高と利益が予想を上回り、初の配当実施を発表。アップルは売上高の落ち込みが予想より小さく、１１００億ドルの自社株買い計画を発表した。 ＢＭＯウェルス・マネジメントのチーフ・インベストメント・オフィサー、ユンユ・マ氏は「予想外の好材料が潤沢で市場を下支えした。決算は控えめか、もしくは弱い内容になるのではないかとの懸念もあったが、そうはならなかった」と言う。 ＬＳＥＧのシニア調査アナリスト、タジンダー・ディロン氏によると、マグニフィセント・セブンの決算発表の最後を飾るのは２２日のエヌビディアで、７社の四半期利益の伸びは４９．４％となる見込み。 アナリストの間では大型株の業績見通しについて明るさが増している。データトレック・リサーチの共同設立者、ジェシカ・レイブ氏によると、大型株６社の今年の業績予想は過去３０日間で平均２．１％上振れしたが、Ｓ＆Ｐ５００種構成企業全体では０．１％の上振れにとどまった。 一方、決算が予想に届かなかった企業は売りを浴びた。ソシエテ・ジェネラルの米国株チーフ・ストラテジスト、マニッシュ・カブラ氏のレポートによると、こうした企業の株価は今四半期に市場全体を３．２％アンダーパフォームした。前四半期は１．２％のアンダーパフォームだった。 ただカブラ氏によると、今四半期は債券市場にボラティリティが生じたタイミングと重なり、決算発表前の株価の動きも好調だったため、アンダーパフォームの度合いが大きくなったことにそれほど意外感はないという。