【独自取材】「岸田首相が平壌を訪問する日も来るだろう」金与正氏の談話の真の狙いを、元北朝鮮外交官に直撃!訪朝実現、そして南北軍事衝突の可能性は?「日本へのお願いの意味」「岸田政権の難局を見抜いている」
日朝首脳会談実現なら、拉致問題の進展は?「岸田首相の“政治的決断”に懸かっている」
もし日朝首脳会談が実現した場合、拉致問題は具体的にどう進展する可能性があるのか。太永浩氏は、北朝鮮が「少し余地を残す形」での外交戦術をとる可能性があると指摘します。 (太永浩氏) 「もし首脳会談で拉致問題が議題に上がるのであれば、北朝鮮の外交戦術としては、『日本側が提起していない2人の日本人が北朝鮮にいるので、日本側が要求すれば日本に帰国させることはできる』ということを示唆するかもしれません。第一段階として、今、北朝鮮が帰国させることができると言っている2人をまず連れて帰る。そして、北朝鮮が『拉致問題は完全に解決済み』という立場から一歩後退し、『今後、北朝鮮がこの問題を再び調べ直してみてからまた会おう』といったように、少し余地を残すような外交戦術を北朝鮮が使うかもしれません」
(太永浩氏) 「その場合には、岸田首相が日本の国民に向けて、『北朝鮮政府の立場の変化こそ岸田首相が成し遂げた大きな成果の一つであり、拉致問題の解決のために引き続き努力する』と表明できます。このように北朝鮮の政治的スタンスを変えられるか。これは岸田首相の政治的決断に懸かっています。今回の金与正談話でも、『岸田首相が大きな政治的決断を下して、この機会をつかむべきだ』と話していますが、北朝鮮が言っている“政治的決断”という表現を我々は非常に注視すべきだと思います」
元外交官指摘、北朝鮮は「岸田首相が政治的ジレンマを抱え、難局に置かれていることを十分に見抜いている」
それでは、日朝首脳会談が実現する可能性はどれくらいなのでしょうか。岸田首相は3月に韓国を訪れ、日韓首脳会談も検討しているとされていますが…。 (太永浩氏) 「現時点においては、すぐに日朝首脳会談が実現できる可能性は高くないと思います。なぜなら、北朝鮮の意図は、はっきりしているからです。北朝鮮は日本を日米韓キャンプデービッドの協力体制から引っ張り出して、先に日本との対話の糸口を掴もうとしています。 しかし、岸田首相の立場としては、単純に金正恩総書記に会った、平壌に一回行ってきたということが目的ではなく、拉致問題の解決に向け、わずかな進展でも図りたいのです。このように、岸田首相の立場と北朝鮮の立場は非常に相反するところなので、調整するのは簡単なことではないと思います」 にもかかわらず、北朝鮮が秋波を送る背景には何が―。太永浩氏が指摘したのは、「政治とカネ」の問題などによる支持率低下に苦しむ岸田首相のピンチを、北朝鮮が見抜いている可能性です。 (太永浩氏) 「岸田首相は下がった支持率を早く戻さないといけないという、政治的プレッシャーが大きいため、韓国訪問や平壌訪問のような政治的勝負に出て、支持率を反転させるチャンスにできるかが注目されています。北朝鮮も、岸田首相が政治的ジレンマを抱え、難局に置かれていることを十分に見抜いています」
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