「スパイ」投獄の被爆者、再審を 韓国調査機関、政府に勧告
【ソウル共同】韓国政府の人権侵害調査機関「真実・和解のための過去事整理委員会」は30日までに、広島で被爆後、韓国で「北朝鮮のスパイ」として1972年から約13年間拘束、投獄された韓国人男性についての調査をまとめた。捜査当局が令状なしに不法拘禁、拷問で虚偽の自白を強要したとして、政府に謝罪や再審開始を勧告した。 男性は韓国南部・済州島に住む金良珍さん(94)で、30日、共同通信の電話取材に「名誉回復のため、生きている間に再審を受けたい」と語った。 終戦前に広島に住んでいた金さんは原爆投下で母、弟、妹を亡くした。64年に故郷の済州島に帰って農業を営んだが、72年に当局から突然「スパイ」だとして連行された。 金さんは昨年、委員会の聞き取りや共同通信の取材に、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者から思想教育は受けたが、「スパイはしていない」と述べていた。 韓国では70~80年代、多数の在日韓国人留学生らが拷問や嫌疑捏造で「スパイ」とされた。被爆者のケースが判明したのは唯一とみられている。