どこがどう変わった? 新型マツダ・ロードスターのNR-Aをモータージャーナリストの大井貴之が筑波サーキットでテスト!
こんなスポーツカーがあるのは日本だけ!!
今年1月、見た目はほとんど変わらない大幅アップデートを受けた新型マツダ・ロードスター。ワンメイク・レースも用意されるモータースポーツ・ベース車のNR-Aグレードに大井貴之が試乗した。 【写真17枚】大井貴之さんが雨の筑波サーキットでテストした新型マツダ・ロードスターNR-Aの詳細画像はこちら ◆見えないところが大幅に進化 サイバー・セキュリティ強化のため「eプラットフォーム」に一新されて登場した2024モデルのロードスター。見た目の変更点は灯火類のLED化とセンター・ディスプレイの大画面化、新色の登場くらいだが、電動パワーステアリング(EPS)の進化、アシンメトリックLSDの採用、運転支援系の進化、そしてDSCトラック・モードの追加など、走りの面でも大きな進化を遂げた。 今回はその中でも走りに徹し、ナンバー付きワンメイク・レースも用意されているNR-Aグレードを筑波サーキットで試乗する機会を得た。試乗車はロールケージの装着やバケット・シートへの変更などレース仕様に仕上げられた車両。見た目の特別感はあるものの、SグレードやAT車を除くLSD付きグレードとの違いはブレーキ・サイズとダンパーくらい。ワインディングでは試すことが出来ない限界領域における進化をチェック出来る機会とも言える。ちなみに、これまでのロードスターはNR-Aのみ2リッターエンジン搭載モデルと同じ、強化された駆動系が採用されていたが、24年モデルからは、LSDが装備されているグレードはすべてNR-Aと同じ駆動系を持つ。 さて、サーキットでロードスターを速く走らせる「肝」は、フルブレーキング時にABSの作動を最小限に留めること。そして、曲がり始めてからの減速となるような高速コーナーの飛び込みではオーバーステアを出さないこと。ドライバー的にはそこをギリギリの線で攻めるのがロードスターの楽しみだという話もあるが、開発陣としては改善したいポイントであるに違いない。 試乗時は生憎の雨。まあ、ドライでなくともステアフィールの進化や、特に制動側の効きを強めたLSDの効果は確認出来る。さらに、トラック・モードが追加されたDSCは効果を試しやすい環境とも言えるが、大粒の雨が降り出したのは試乗開始とほぼ同時。路面状況が大きく変わっていくタイミングだったため、楽しみにしていた全開アタックの新旧タイム比較は見送らざるを得ない。 ◆走りの違いは想像以上 コースインしてまず感じたのは、ABSの進化。雨の降り始め、周回毎に変化(悪化)していく路面コンディション。敢えて試そうとしなくてもちょいちょいABSのお世話になるのだが、その制御が緻密! カメラマンが待ち構えている第1ヘアピンで力任せのフルブレーキングを試してみると、ペダルもステアリングも「ガタガタガタッ」とブレーキを掴んだり離したりを繰り返す従来型に対し、「タタタタッ」とスムーズな減速。その違いは想像以上で、スキール音だけで新旧を判別出来るレベル(是非、ウチのYouTubeで確認してください)。結果、ABSがフル作動している状態でもライントレース性能が向上している。 これは進化したDSCの副産物とも言える。今回、DSCトラックというモードが追加されたというが、DSCオン、つまりデフォルトの状態でも制御が大きく変わったと感じた。DSC制御が2種類設定出来るようになったため、通常のDSCオンでは、早い段階で出力やブレーキの制御が入りスムーズにクルマを安定させてくれる。そして、新設されたトラック・モードでは出力制御無し。いよいよヤバくなった時だけスピンを防ぎ、コース内に止まることが出来るようにアシストしてくれる。 そしてアシンメトリックLSDの効果。NB型から採用されていたスーパーLSDに対し、巡航及び加速側の差動制限力を落とし、減速側の差動制限力を高めている。制動時の車両安定性が高められているのはもちろん、ターンインやコーナリング中のアクセル・オフに対してもタックイン的な不安定さを感じないハンドリングに進化。そこにはフリクションが軽減され、EPS制御も見直されたステアリング系も大きく貢献していると思われる。 ロードスターは、制御に頼らない「操る楽しさ」を追求すべき! それが出来るのはローパワー&ハイバランスのロードスターだけ。と思っていたド昭和な筆者だが、スポーツカーといえども安全性が高いに越したことはないし、上手く操ればDSCオフが一番速い! というスポーツカーの醍醐味がしっかり守られている。ロードスターは日本の宝です。 文=大井貴之 写真=奥隅圭之 (ENGINE2024年8月号)
ENGINE編集部
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