サッカーW杯アジア最終予選独走の一因となった攻撃的3バック 世界一へ求められる進化
■強豪国相手に通用するか
ただ、強豪国が出場するW杯ではそうもいかない。
簡単に主導権は握れず、橋岡や谷口が危惧するように、三笘や堂安が最終ラインに吸収される時間帯は長くなる。敵陣でボールを失った際に即時奪回を狙っても、巧みにプレスをかいくぐられるケースは増えることが予想される。背後の広大なスペースは、カウンターの格好の餌食となる。
押し込まれた22年カタールW杯1次リーグのドイツ戦とスペイン戦を3バック(両サイドが最終ラインに吸収される事実上の5バック)で戦い、両W杯優勝経験国をともに2-1で下す歴史的快挙を成し遂げている。決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦はPK戦で敗れた。ただ、ドイツ、スペイン戦ほどは押し込まれることなく両サイドが懸命に高い位置を維持し、延長戦終了時まで十分に勝機を感じさせた。
自陣に5-4-1のブロックを築き、相手を引っ張り込んでからのカウンターはすでに世界に通用するとみる向きもあるかもしれない。しかし、多くの決定機を与えながらわずかな好機を決め切ったドイツ戦やスペイン戦の内容は番狂わせとして最大級に評価できても、世界一を目指す戦い方としてはかなり心許ない。
アジア勢を震え上がらせている攻撃的3バックがそのまま世界一を争うライバルに通用するとは、誰よりも森保一監督や選手が考えていない。カタールW杯で結果を出したカウンターに徹した事実上の5バックが、安定して結果を出せないことも理解している。
3バックにおける攻守のバランス変更、長く採用してきた4バックへの回帰も含め、25年は世界一に向けた最善手を探る1年となる。(奥山次郎)