若者の賃金が上がらない日本に巣食う「魔物」の正体…!ライドシェアもPCR検査も骨抜きにした「逃げる日本」とエリザベス女王の「決定的な違い」
コロナでも「古いやり方」にこだわった日本の行政
このように日本では「新しいやり方」からとことん逃げてしまう傾向がある。それは、信じがたいことに国民の命が危険にさらされる世界的パンデミックの最中でも同じだった。 コロナ禍の時代に、日本だけがPCR検査数が極端に低かったことを読者は覚えておられるだろうか。なぜ少なかったかと言えば、手作業でしていたからだ。検査をピペットで手作業でやっていれば、1日何百万回なんてできやしない。 当時、「日本生まれ「全自動PCR」装置、世界で大活躍、 なぜ日本で使われず?」(TBS NEWS23 2020年06月29日 https://www.youtube.com/watch? v=341BaeFmSOw)というニュースをTBSが報道していたが、機械でやることを厚生労働省が邪魔していたからだ。この自動機械は日本製で、全世界で使われているのに、厚労省は機械の導入を遅らせた。私は、これは厚労省による機械打ち壊し運動(ラダイト運動)だったと思う。 一方、韓国は、コロナに対してすぐさま自動機械で大量検査をした。検査の生産性は日本の100倍以上だろう。韓国では、あらゆるところでこのような生産性の上昇が実現している。だから、全体として生産性が上がり平均賃金は日本を追い抜いた。
逃げてはいけない
『ザ・クラウン』(Netflix)というエリザベス2世と戦後のイギリス史を描いたドラマがある。 1967年のポンド切り下げ時の話だが、エリザベス女王が王室の厩舎の競走馬が昔はレースで優勝したのに、近年は成績が振るわないことを嘆く場面がある。それで女王はどうしたか。 フランスとアメリカの厩舎を訪ね、彼らが科学的方法で競走馬を育成していることを知る。イギリスも、学ばなければならないと言って、旧態依然の厩舎のトップをすげ替え、新しいトップを任命する。 女王は、海外の最新の方法を知った新しいリーダーが必要だと認識したのだ。 ありあらゆるところで、政府が新しいやり方を邪魔していては経済が困難に陥るのは当然だ。外国人がするか日本人がするかは大した問題ではない。 新しい方法を取り入れることが重要なのだ。 さらに連載記事「サンデーモーニング「関口宏の発言」にうんざり…佐々木麟太郎の「米名門大学進学」を批判する「昭和の空気」が、日本のスポーツをダメにした!」でも、日本に巣くう「魔物」に迫っていこう。
原田 泰(名古屋商科大学ビジネススクール教授 元日本銀行政策委員会審議委員)