GSX-S1000GXはハヤブサと並ぶスズキの最高峰スポーツバイク!?「開発チームの言葉からその実力に迫る」
「スカイフック理論によるサスペンションの電子制御(スズキフローティングライドコントロール=SFRC)を効かせすぎると、乗り心地は向上しても、タイヤの接地感をはじめとするロードインフォメーションが減ってしまうため、ライダーがバイクを操る楽しさを減らしてしまうことがわかりました。 そこで『スズキらしい、乗って楽しいバイク』にするために工夫したのが、スズキロードアダプティブライドシステム(SRAS)です。これはスズキ独自のプログラムで、開発当初は予定にありませんでした。しかし開発を進めるうえで必要であることがわかり、作ったものです。 また、SFRCは路面状況に応じて自動的に調整されますが、オフにすることもできます。これはライダーの気持ちを優先したもので、私個人としても好きな機能です。スズキ初ということで苦労もありましたが、自信を持って皆様におすすめできるものになったと思っています」 これらはスロットル操作とも連動しており、不整地走行時にギャップを拾った際、不意にスロットルを開けてしまった場合に急激な加速をしないよう、スロットル応答性を落とすよう設定されている。
スポーツ性と快適性を両立した走りを追求
テストライダーを務めた田畑廉さんからは、電子制御サスペンションの特性を生かし、走行フィーリングを入念に煮詰めていった過程が語られた。 「開発段階では主だった販売国で開発を行うことが多いのですが、GXでは新型コロナ禍のためそれができませんでした。そこでヨーロッパからライダーを招き、スズキが所有する北海道のテストコースで開発を行いました。そこはヨーロッパの道路を模して作ったもので、主に四輪車のテストに使われています」 その後、コロナ禍が落ち着いてからはテスト車両をヨーロッパへ送り、さらなる開発を続けたという。 「GXにはさまざまな電子制御を採用していますが、開発の念頭にあったのは『やりすぎない制御』です。日本の道路の速度域では、バイクは安定して走れます。そのため開発初期では、ライダーによっては電子制御が過保護に感じてしまうことがあったのです。それからはバランスの取れた制御を目指して開発を進めました。 たとえばノーズダイブですが、ここに補正をかけすぎるとフロントフォークが沈み込まないためクリッピングポイントをつかみにくく、旋回しにくい症状がありました。補正を入れつつ自然な旋回ができるよう調整を繰り返しました。これはトラクションコントロールも同じです」 電子制御による補正が入っていることにライダーが気づかなくても、しっかりと補正がかかっている。そのように滑らかな介入を目指し、開発が進められた。 「それでも開発を進めていると、『何のための制御なのか』と思い悩む場面もありました。安全性と快適性を追求して電子制御を強く効かせていくと、最終的には電子制御ありきのバイクになってしまい、GSX-S10000GX本来の乗り味が薄れてしまったのです。走らせる楽しさとのバランス、やりすぎない制御を作ることが重要でした」 乗り心地の良さを決める大きな要因はサスペンションにある、と田畑さんは言う。クロスオーバーのGXは長いストロークを持つサスペンションを装備する。減衰力をソフトにすれば、乗り心地は良くなるが、高速走行時の直進安定性、俊敏なハンドリングなどとトレードオフになる。 スズキ初となる電子制御サスペンションをGXに導入したのは、スポーツ性と快適性を理想的な次元で両立するためだろう。 「テストライダーとしてとくにおすすめしたいのは、スズキロードアダプティブライドシステム(SRAS)です。ハード、ミディアム、ソフトの3種類の減衰力は乗ればすぐに違いがわかります。これがこのバイクのおもしろさで、モードを変えて乗っていただきたいです。 このバイクのいちばんのウリといっていい電子制御サスペンションによって、スポーツ性と快適性を両立させることができています。また、GXはライダーとバイクの一体感を強く感じられます。一体感とは、リラックスした状態で乗れること、イメージしたとおりに加速できるといった点です」
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