GSX-S1000GXはハヤブサと並ぶスズキの最高峰スポーツバイク!?「開発チームの言葉からその実力に迫る」
電子制御サスペンションにはどんな機能があるのか
もうひとつ、スズキが初採用した新技術が、電子制御サスペンション「スズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション」(S.A.E.S.)だ。これについてはプラットフォーム開発グループの宮川敬太郎さんが説明をした。 「S.A.E.S.には、ソフト、ミディアム、ハードのほか、ユーザーが好みに設定できる4種のモードがあります。メリットとしてはまず自動であることです。前後サスペンションの減衰力調整に加えてリヤサスペンションにモーターを設けることで、プリロードも4段階に電子制御しています。こちらはオート、一人乗り、一人乗り+荷物、二人乗り(筆者注:荷物の有無を問わない)、の4モードとしました。 オートモードでは、オートレベリング機能と減衰力の2つの補正制御を行っています。オートレベリング機能は、ライダーが乗り降りしたときや、荷物を積んだり下ろした後に数秒間走行すると、車両姿勢の変化を検知して適切な姿勢を維持するために自動的にリヤサスペンションのプリロードを自動調整する機能です」 プリロードの自動調整は、1mmを調整するのに約1秒かかる。プリロード調整幅は10mmだから、最弱から最強まではおよそ10秒を要することになるが、基本的にプリロードは中間付近で調整するため、たいていの場合、プリロード調整にかかる時間は3秒程度だという。 「減衰力の自動調整機能も、ソフト、ミディアム、ハード、ユーザーの4モードがあります。機械式に比べて電子制御式のほうが調整幅が広く、大きな差があります。グランドクロスオーバーとして、GSX-R1000のようなスポーツ性能とともに、アドベンチャーツアラーに求められる快適性と利便性、さまざまなシチュエーションに対応するハンドリングを可能にしました」 ユーザーモードでは、ソフト/ミディアム/ハードをベースとして、前後それぞれをプラスマイナス3で微調整できるため、体重や荷物、乗り方に合わせて細やかにカスタマイズできる。 「基本の姿勢制御を決めるVTマップ制御を採用しています。これは前後サスペンションのストロークセンサーを用いてストロークスピードをSCU(サスペンションコントロールユニット)にて演算し、ストロークスピードに応じて減衰力を変化させるものです。この設定を変えることで減衰モードの違いを生み出しています。 そして、ここに車速を加えることで、車速に応じた減衰力調整も可能としています。これがスズキベロシティディペンデントコントロール(SDVC)です。ソフト、ミディアム、ハード、これらの設定は低速域では減衰力の差を生みますが、高速域になるとすべて同じ減衰力へと自動で設定されます」 たとえば電子制御サスペンションをソフトにしていた場合、低速域では乗り心地がいいが、高速域になると路面のギャップを拾うとサスペンションの減衰の収束が遅れ、車体が不安定になってしまう。SVDCを組み込むことで、設定はソフトのまま高速道路を走行しても車体の安定性も保たれるのだ。 ちなみに電子制御サスペンションは、路面状況と車体姿勢の変化を1000分の1秒単位で検知し、その結果を演算して減衰力を調整している。 「スズキディセレレーションダンピングコントロール(SDDC)は、IMUから送られる減速Gをパラメータに加えることで、ブレーキによる車両の姿勢変化をスムーズに収束させ、理想的なピッチ動作となるよう最適な減衰力に制御するものです。これは常時動作しているので、ライダーは設定する必要がありません」 これは、いわゆる急制動時のノーズダイブ、フロントフォークが深く沈み込むことで前のめりの姿勢になることを防ぐ機能だ。かといってまったくノーズダイブしないわけではなく、あくまで自然な姿勢変化に抑えることで、ブレーキからコーナリング動作への移行をスムーズにしてくれるものだ。
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