<高校野球>秋田商の小さな左腕・成田が16奪三振でダルビッシュ越え!
第97回全国高校野球選手権の大会5日目が10日、甲子園球場で行われ、第3試合では秋田商(秋田)の168センチのサウスポー、成田翔が、龍谷(佐賀)を相手に16三振を奪うピッチングを見せ、ミス絡みで1点を失ったが、3-1のスコアで完投勝利をした。桐光学園の松井裕樹(現楽天)が、3年前に作った「22」の1試合の最多奪三振記録には及ばなかったが、ダルビッシュ有が2003年の平安戦で記録した「15」を超えた。一躍、今秋のドラフト候補として注目を集めることになった。
三者三振で始まり三者三振で終わった。 成田は、その立ち上がり、先頭の石橋を外角高めのストレートで空を切らせた。続く川添は、三球三振。最後のストレートは142キロを示した。3番の古賀は、ワンバウンドになるスライダーを思わずハーフスイング。三者連続三振で、成田の三振ショーが始まった。 成田は「低めに集めるよう」と試合前に女房役と工藤を確認していた。そして3-1の2点リードで迎えた9回も、まずは松永を138キロのストレートでスイングアウト。 「点を取ってもらった以上、最後は抑える。それしか考えていなかった」 北村には、低めにズバッとストレートを決めると手がでない。最後は、代打の矢野をまたワンバンドになるスライダーに手を出させて圧巻の三者三振でゲームセット。スコアブックの三振を示す「K」マークは「16」を数えた。 「16個の三振は、狙ったわけではない。相手の打ちにくいところに投げた結果が、三振につながっただけ。味方が点を取ってくれるまで我慢しようと考えていた」 イケメンと高校野球女子の間で秘かな人気のある成田は、清々しくそう言った。 それでも三振へのこだわりは持っている。6回、7回と走者を得点圏に背負った場面では、三振ではなく内野ゴロを打たれた。結果的に無失点に切り抜けているが、「(三振を取らねばならない)ピンチで内野ゴロを打たせた。そこが反省点」とプライドをのぞかせた。 身長は168センチしかない。だが、最速142キロのストレートに、同じ腕の振りで落差とキレが鋭いスライダーを投げられると、高校野球レベルではなかなかその見極めが難しい。 試合後、龍谷の徳山監督は、「「事前に見た映像とストレートの速さがまったく違っていた。100球を超えても球威が落ちなかった。気力も成田が上回っていた」と嘆いた。 空振りを取れるストレートがあることも奪三振の量産につながっている。 しかも「序盤はストレートが走っていた。中盤からはスライダーに変えた。終盤は、監督さんに『ストレートが落ちている』と言われたので、そこからまたギアを上げました」と、9イニングをしっかりとマネジメントしながら投げるのだから手がつけられない。5回に失策がからんで1点は失ったが、自責はゼロ。143球の3安打、3四死球の熱投だった。