ウサギが「ゴルフ場開発に反対」で訴えた! 実際に起きた「奇妙な裁判」の「驚きの内容」
道徳的権利と法的権利
道徳的権利とは、(1)他者にも我々と同じ道徳的地位を認めよう、(2)平等の配慮をしよう、そして(3)固有の価値をもった存在として尊重しよう、という要請に基づいて主張されるものであって、それらだけでは裁判官を納得させる法的権利にはならない。 法的権利となるためには、以上の道徳的権利の要件を充たしたうえで、さらに固有の性質を備えなければならない。 ウェスリー・ホーフェルド(1879─1918)という法学者の見解に基づいて、具体的に説明しよう。 法的利益としての「権利」は、「請求権」(claim)、「自由」(liberty)、「免除」(immunity)、「権能」(power)の4つに分解される。そしてそれらには、他者の具体的な法的地位が対応する必要がある。「請求権」には「義務」(duty)が、「自由」には「無権利(no-right)」が、「免除」には「無能力(disability)」が、そして「権能」には「責任(liability)」が対応しなければならない。 たとえば、こんな感じである。 (1)私の「自由」は、あなたの「無権利」……私の趣味はコスプレ(漫画やアニメのキャラクターのコスチュームを身にまとい、なりきること)である。私には休日に大人気漫画『鬼滅の刃』の登場人物・竈門禰豆子のコスプレをする「自由」があり、あなたは私のこの行為を止められないという意味で「無権利」である。 (2)私が「免除権」を持つ時、あなたは私の法的地位を変更するということにつき「無能力」……私がコスプレをしてよいのは、私が「表現の自由」という、変更されない(その意味で「免除権」)憲法上の権利のゆえである。あなたは私の法的地位を変更することはできない。その意味で「無能力」である。 (3)私が商品の「請求権」を持つ時、店は私に商品を引き渡す「義務」を負う……私はX店とコスチュームを買う契約を結び、代金を支払ったので、私にはX店に商品を引き渡せと求める「請求権」が発生し、それに対応してX店は私に商品を引き渡す「義務」を負う。 (4)私は法的地位を変更する「権能」をもち、それによって相手は「責任」を負う……X店が注文したコスチュームを引き渡さない(債務不履行)ので、私は売買契約を解除する「権能」を行使した。それによってX店は、売り主としての法的地位を失うという「責任」を負った。 以上が法的権利の具体的な効力である。 さらに連載記事<女性の悲鳴が聞こえても全員無視…「事なかれ主義」が招いた「実際に起きた悲劇」>では、私たちの常識を根本から疑う方法を解説しています。ぜひご覧ください。
住吉 雅美