米英がイエメンの「フーシ派」拠点を攻撃…船舶の安全確保には「攻撃」以外に方法がなかった西側の事情
<親イラン武装組織フーシ派のレーダーとドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルの保管・発射場所を米軍などが攻撃。その影響は?>【木村正人(国際ジャーナリスト)】
[ロンドン発]ジョー・バイデン米大統領は11日の声明で「米軍は英国とともに、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支援を得て、世界で最も重要な水路の一つであるイエメン沖の航行の自由を危険にさらす親イラン武装組織フーシ派が使用するイエメンの多くの標的を攻撃した」と発表した。 【動画】紅海で日本郵船の貨物船を急襲するフーシ派 世界的なベンチマークであるブレント原油は1バレル=79.15ドルまで2.25%上昇。米国のWTI原油先物も73.75ドルまで2.4%ハネ上がった。昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は対前年で11月の3.1%から3.4%に再び上昇している。イスラエル・ハマス戦争で中東が不安定化し、原油価格が上昇すればインフレが再燃し、世界経済が再び混乱する恐れがある。 中東・アフリカを担当する米中央軍の発表では、フーシ派への攻撃はレーダーシステム、防空システム、カミカゼドローン(自爆型無人航空機)、巡航ミサイル、弾道ミサイルの保管・発射場所を標的に行われた。昨年10月17日以降、フーシ派はイスラエルへの制裁を口実にイエメン沖の国際航路で27隻の船舶を無差別に攻撃している。 米中央軍のマイケル・クリラ司令官は「フーシ派とイランのスポンサーは米国を含む何百人もの船員の生命を危険にさらすなど、これまでに55カ国に影響を与えた国際海運に対する違法な無差別攻撃に責任を負っている。彼らの違法で危険な行動は決して許されるものではない。その責任を問われることになる」と述べた。 ■軍事力を近代化させたフーシ派 バイデン氏によると、攻撃は紅海における国際船舶への史上初の対艦弾道ミサイルの使用を含む前例のないフーシ派の攻撃に直接対応するものだ。海賊行為でも20カ国以上の乗組員が脅迫され、人質に取られている。2000隻以上の船舶が紅海を避け南アフリカの喜望峰回りの航路を取っているため数千キロの迂回を余儀なくされ、数週間の遅れが生じている。 もともとは山岳地帯でのゲリラ戦を得意とするフーシ派はイランの支援を受け、軍事力を近代化させ、ドローンやミサイルを大量に保有している。国際海運への攻撃も最近、エスカレートさせていた。米中央軍によると、9日、フーシ派はカミカゼドローン、対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルによる複合攻撃を数十隻の商船が通過する国際航路に向け行った。 この際、米海軍の空母ドワイト・D・アイゼンハワーから出撃した戦闘攻撃機F/A-18、ミサイル駆逐艦グレイブリー、ラブーン、メイソン、英海軍のミサイル駆逐艦HMSダイヤモンドによって、18機のカミカゼドローン、2発の対艦巡航ミサイル、1発の対艦弾道ミサイルが撃墜された。 11日にもフーシ派は国際航路に向け対艦弾道ミサイルを発射した。ある民間船舶はミサイルが海面に衝突するのを目視で確認したと報告している。米国を含む14カ国は3日の共同声明で、このまま攻撃を続ければ、その結果をみることになるとフーシ派に警告を発していた。