スマホで検察官や弁護人のアバターを操り有罪か無罪か議論…「メタバース法廷」で模擬裁判
若者らに裁判を身近に感じてもらおうと、法学者らでつくる団体がインターネット上の仮想空間「メタバース」で模擬裁判を行う「メタバース法廷」を開発した。18、19歳も裁判員に選ばれるようになり、「法教育」の重要性が高まる中、若い世代の司法への関心を高める一手となるか――。(杉本和真)
保険金目当ての放火で審理
「火災は人為的な放火だ」「被告に放火する動機はなく、石油ストーブの消し忘れが火災の原因だ」
仮想空間に作られた法廷で、検察官と弁護人の「アバター」(分身)が意見を交わす。保険金目当てで女が自宅に火を付けたというストーリーの模擬裁判。現住建造物等放火と詐欺未遂罪に問われた被告や裁判官、裁判員、傍聴人のアバターが審理の様子を見守る。
このメタバース法廷を開発したのは、石塚伸一・龍谷大名誉教授(刑事法)が代表理事を務める一般社団法人「刑事司法未来」(東京)だ。裁判員に選ばれる前に裁判の基礎知識を身につける機会を持ってほしいと考え、企画した。
参加者はパソコンやスマートフォンでメタバース法廷にアクセスし、検察官や裁判官など自身の立場を選ぶ。アバターを操りマイクを通じて意見を述べ合い、有罪か無罪かを話し合う。画面上の視点切り替えボタンをクリックすれば、証言台や裁判官らが座る法壇、裁判官と裁判員が話し合いをする評議室などそれぞれの目線から参加することも可能だ。
「それぞれの立場から結論考えるのは楽しい」
放火事件以外にも、昔話や童話、実際にあった事件を参考に複数のシナリオを用意。メタバース法廷に参加したことがある東京都の中学1年生(13)は「それぞれの立場の話を聞いて結論を自分で考えるのはとても楽しい経験だった」と振り返る。
同法人では現在、一般の人が有償で利用できるよう、準備を進めている。システムの安定的な運営を目指し、維持費の確保などを目的にクラウドファンディングを実施。10月にはメタバース法廷の「内覧会」も開き、260万円超を集めたという。
教育現場で活用
同法人が想定するメタバース法廷の活用場所の一つが教育現場だ。