紫式部は「石山詣」で源氏物語を着想? たらればさん号泣、枕草子のシーンが大河ドラマに登場
日記ににじむ政治家の性格
水野:さて、「蜻蛉日記」は広く貴族の女性たちに読まれていたということですが、スペースのリスナーさんからは藤原実資(秋山竜次さん)の「小右記」も当時から多くの人に読まれていたんですか?という質問をいただきました。 【関連記事】大河ドラマ「光る君へ」に登場、蜻蛉日記・枕草子…古典の名作に歓声 https://withnews.jp/article/f0240414001qq000000000000000W02c10501qq000026792A たらればさん:当時の男性の日記は「古記録」と呼ばれ、子孫に栄達をもたらすために書くことが第一義としてあったと言われています。 子孫に見せる前提なんですが、それを他の一族の者から「貸してください」と頼まれることもあり、政治的な取引の材料にもなって、そのまま返されなかったこともありました。借りパクですね(笑)。 小右記にも抜けているところがあるんですが、貸し出して帰ってこなかったのだろうといわれています。 日記に何をどう書くかで、書き手の性格や政治的な立場が分かります。人となりがぼんやり見えてくるのも楽しかったりしますね。 水野:17歳の伊周を抜擢したことに、実資が「こんな身内びいきの人事は許さん!」などと書いているのでしょうか。 たらればさん:彼(実資)は藤原北家小野宮流といって、道兼や道長クラスの権力を手にしていてもおかしくない血筋です。 どこかが違って権力をとることはありえましたし、ドラマの放送時点では今後もゼロではない状況です。 彼の性格なんでしょうけど、正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると書くことが、子孫にとってためになると思って日記に書いていた可能性が高いと思います。 水野:なるほど。 たらればさん:藤原行成(渡辺大知さん)も「権記(ごんき)」という日記を残しています。道長や帝にこんな頼まれごとをした…といった記述があり、今後ドラマでも、権記の記述も出てくると思います。 藤原道長(柄本佑さん)の記した「御堂関白記」にも、怒りっぽいとか感情的になるといった道長の性格が出ています。墨でばーっと消した跡があって、おっちょこちょいなんだなぁ、とか。すごく(文字数を)書くときは書くけれど、書かない時は書かないとか、そんなおもしろみがあります。 水野:むらっけがあるんですね。 たらればさん:彼らがつけている日記は、当時、陰陽師(安倍晴明<ユースケ・サンタマリアさん>など)の作った「暦」に書き込んでいるんですね。 今も似たタイプが書店などで売っていますよね。カレンダーが載っていて、そこに日記を書き込む形式の日記帳。 安倍晴明らがつくった暦は「具注歴(ぐちゅうれき)」といって、この日の吉凶や、月食、日食の予報などが記してあって、日記を書き込むスペースもあるんですね。1日分のスペースが決まっているわけです。 水野:そうなると、書かなかったのが一目瞭然ですね。 たられば:あとから2~3日ぶんまとめて書くこともあったようです。 水野:実資は毎日まじめに書いていそうです。 たられば:それぞれの性格が分かるのが記録の面白さですね。古記録を専門にしている倉本一宏先生がドラマの時代考証についているので、そういう面白さがドラマににじむんだろうなと思います。