〝参加しやすい〟農業で後継者づくり 山口県下関市での取り組み
山口県下関市の農事組合法人清末東ファームは、加工品の販売、耕畜連携、学校給食への食材納入など、さまざまな分野で地域と連携し、活性化に取り組んでいる。 同法人がある同市清末地区は、江戸時代に開拓された広大で平たんな田畑が広がる。海に面しているため、比較的暖かい気候で冬の降雪が少なく、水稲・園芸作物を中心とした農業地帯で、山陽地区有数の作付面積を誇る。 2018年4月から清末新田地区で基盤整備事業が始まり、農業と農地を守り次世代へ引き継ぎ、後継者や女性が参加しやすい農業を目指そうと、同年7月に同法人を設立した。近隣6集落から43戸が構成員となり、水稲を中心に小麦、イチゴ、ミニハクサイなどを栽培、面積は約35ヘクタールになる。 構成員の主力は60代で、将来のためにも後継者づくりに積極的に取り組む。定年前の就業者に声をかけて、同法人が行うイベントや食事会に招待して構成員との接点を設けている。早い段階から次世代とコミュニケーションを取って、住民との関係づくりに力を入れる。
加工品販売、耕畜連携…事業多彩
通年で作業を確保するため、以前から女性組合員が要望していた園芸作物の栽培も始めた。本格的に野菜栽培をした経験がない人が多く、最初は失敗も多かった。軌道に乗ってきた現在は、イチゴ、キャベツ、ミニハクサイなどの栽培に取り組む。 規格外品などの生産ロスを抑えられないかと声が上がり、22年2月に加工場を新設した。女性構成員が中心となり、ジャムや浅漬けなどの加工品の販売を始めた。農作物の収穫・調製作業にも積極的に参加し、今や法人にとって頼れる存在となっている。 高効率化・省力化にも積極的に取り組む。品目別に作業時間や施肥量、収穫量などの栽培データを記録・分析し、収益効率の良い品目にシフトしている。 多方面にわたる取り組みが評価され、24年4月に山口県集落営農法人連携協議会会長賞を受賞した。29年には基盤整備が完成する予定で、併せて野菜の作付面積の拡大、耕畜連携での飼料用米栽培、農業機械の大型化などを予定し、清末地区の中心的担い手として期待が膨らむ。 同法人の新久保克己代表は「この地域を守るために法人を設立した。みんなで協力して地域を活性化していきたい」と意欲を見せる。
日本農業新聞