「同じ失敗はもう起きないだろう」…「H3」試験機の再挑戦、15日に打ち上げ迫る
インタビュー/神経研ぎ澄ませて準備 JAXA・H3プロジェクトマネージャの岡田匡史氏
H3試験機2号機の打ち上げを控え、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)に入ったJAXAの岡田匡史H3プロジェクトマネージャは、8日までに日刊工業新聞のオンライン取材に応じ「同じ失敗はもう起きないだろう、やりきった」と自信を示した。 ―打ち上げまで1週間を切りました。 「1号機の失敗から1年弱が経過し、ついにここまで来たかという気持ち。現在は打ち上げに向けたロケットの組み立てを進めており、8日にもフェアリングを取り付けて実質的なカウントダウンが始まる。原因となった2段目のエンジンに搭載する電気系の装置は1月中に組み込んで機能点検し、問題はなかった。他にやり残したことはないかを探りつつ、神経を研ぎ澄ませながら準備している」 ―詳細な原因究明に時間がかかりました。 「原因となった電気系のチームには物理の理論に強い人材が少なかった。そこでJAXAの衛星を作るチームや三菱重工の研究所に所属する人材に協力してもらい、原因となった機構の解明などに関する知見を深めた。普段ロケット開発に関わらない部門ならではの新しいセンスがあった。将来の宇宙開発では、こうしたさまざまな分野の人たちが関わり合うことで、これまでにないこなれたシステムを作れると感じた」 ―失敗の原因部分以外で1号機と変更したところは。 「1号機と2号機は双子の兄弟のように似ているロケットで、原因部分以外の大幅な変更はない。ただ1号機の飛行で得られたデータはすべてフィードバックしており、新型の1段目の主力エンジンである『LE―9』の燃焼が良かったことが分かった。一方で、1段目のエンジンを分離した時の衝撃が大きいことが判明。2号機ではこの衝撃のレベルを下げるために緩衝機構を変更した」 ―多くの人が打ち上げに期待しています。 「開発に関わる企業にはJAXAと一緒にもう一度挑戦してもらっている。今度こそ成功させたい。また宇宙ファンをはじめとした応援してくれている人たちの存在は大きく、心が折れそうな時に励ましの声をかけてくれた人もいて支えになった。2号機の再挑戦を見守ってほしい」