『ノンレムの窓』では中村倫也と古田新太が“共鳴” バカリズムから視聴者への“問いかけ”
『ノンレムの窓 2025新春』第2話「よーい、フィクション!」で描かれる風刺的物語
続く第2話「よーい、フィクション!」は、「フェイクニュース」をテーマにしたブラックコメディー。バラエティー番組のディレクター・松永(原田泰造)は上司の保身のために、ある罪を着せられて職を失うが、そんな彼に謎のプロデューサー・矢橋が手を差し伸べる。矢橋役を小雪が演じ、怪しくもどっしりとした存在感を放っている。 冒頭で報じられる「スキャンダルニュース」には、さっそく「フェイク」と「リアル」を撹乱するある演出が施されており、視聴者の意表を突くだろう。脚本の竹村は過去に『つづ井さん』(読売テレビ)を手がけたほか、『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)の構成、 『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)の脚本など、数々のモキュメンタリー作品を手がけており、「現実とフィクションの狭間にある“何か”」を描いてきた。こうした題材はまさに、彼の得意分野なのではないだろうか。 同シリーズで竹村が脚本をつとめた作品には、他に『2023・夏』の「出世したくない君へ」があり、こちらも出色の出来だった。「意識高い系」に憧れる主人公・田前(瀬戸康史)が憧れの女性から「意識高く見せようと必死でダサい」と言われ、「意識を低くするセミナー」に通い始める。「意識が低いもの」として推奨される「あるある」の数々で視聴者を爆笑させながら、鷹揚さの欠落した現代社会を切れ味鋭く風刺していた。 『ノンレムの窓』も『ブラッシュアップライフ』も、そして「地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー」を謳う最新作『ホットスポット』もしかり、「バカリズムブランド」の作品はいつでも「『あるある』と『ないない』の併存」がベースとなっている。突拍子もない設定でありながら人物の会話はリアルで、「“お約束”の反転」が行われる。それはつまり「常識を疑う」ということではなかろうか。エンタメ要素がたっぷりありながら、「あー面白かった」で終わらない。ひとしきり笑わせたあと、必ず「問いかけ」がある。 長いお正月休みから日常に引き戻された我々の脳に、『ノンレムの窓 2025新春』と『ホットスポット』の2作品はきっと、痛快な風穴を開けてくれることだろう。
佐野華英